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September 05, 2015

又吉 直樹 『火花』

平成27年9月号の「文芸春秋」誌に掲載されたもの。

漫才師が小説を書きそれが芥川賞を受賞したということで話題沸騰だが、作者は小さい時から読書が好きで何年も前からエッセイを書いているのでそれほど驚くことはないと思っている。それよりも「お笑い芸人」とか「漫才師」という前書きは人を職業、身分、地位、見た目で評価しようとする悪い習慣だと思う。
 
駆け出しの漫才師である徳永は型破りな生き方をする先輩漫才師の神谷に出会い、師と仰ぐほどの交流を続けていく。きちんとネタを考え抜いたうえで独創的な漫才を目指す徳永とどこにもない個性的な漫才を目指す神谷とはその相反する性格故長く交流を続けられたのだが人気が出始めてテレビに出た徳永の漫才を見た神谷は面白くないと言い、徳永は言いようのない屈辱感を覚える。そして人気が落ちてきたことを自覚した徳永が漫才をやめると告げてから神谷が変わり始めた。

売れない時代を過ごす漫才師たちのそれこそ火花が散るような言葉が飛び交う物語なので1度読んだだけでは十分に理解できなかったのが本音。全編のほとんどがこってりとしたとした大阪弁で書かれているので大阪弁になじまない人にはつらい部分があるかもしれないが、徳永の心情や情景の描写などはきめ細やかで場面の展開なども丁寧なのはこの作者らしいと思う。
汚い服を着た芸人たちが古びた劇場で何とか陽の目を見ようと生きていく姿の描き方に愛情が感じられるし、売れない神谷に尽くす女性を見る優しいまなざしがとてもいい。

最後の変わり果てたといってもいい神谷の姿には女性選者の一人が異議を述べたように違和感を感じたが、ある種破滅的魅力のあった神谷が目標を見失い、結局は自分自身を破壊してしまったのだろうと考えた。

職業上これ以上お笑いに関する物語は書けないように思うが、作者の繊細な感受性と独特のユーモアを生かした小説を期待したい。


 
大阪キタの名曲喫茶で。
バロックの後、急に「ペトルーシュカ」が流れたので驚いた。note
 
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Comments

こんばんは

「火花」の紹介、ありがとうございます。

私の方は、図書館に予約していた「第2図書係補佐」が、ようやく手元に来たところです。
「夫婦善哉」のところを読んでいたら、もう10年以上の前の秋葉原電気街の店先での出来事を思い出しました。店員同士が何かのことで口論していて、その一人が「自分の価値観を押し付けないでくれ!」と言ったことが耳に入り、「パワハラ何てものも、これに近いものがあるな」と思ったものでした。まあ、いろんな人がいて、面白いですね。
先日写真掲載された法善寺横丁にも、出張のついでに何度か行きました。
まだ読み始めたばかりですが、フリーペーパーに連載した1篇3ページ程度の短い文章で、それぞれ切り口がはっきりしていて、刺激を受けて楽しめるよう思います。

「火花」の方は、予約がまだ約100人待ちで、だいぶ先のことになります。

Posted by: HABABI | September 06, 2015 at 12:00 AM

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