« ラヴェル 『亡き王女のためのパヴァーヌ』 | Main | サン・サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調 op61 »

August 04, 2015

芥川龍之介 『鼠小僧次郎吉』

気のきいた短編を読みたいときは青空文庫が本当に便利だが、この作品は芥川にしてはちょっと珍しい内容のお話。
汐留の船宿の二階で3年ぶりに再会した2人の遊び人風の男が酒を酌み交わしながら最近の江戸の話していたが鼠小僧の話題が出た時、江戸を離れていた男が旅先で偽の鼠小僧に出会った話をする。
話自体はそれほど込み入ったものではなく、江戸を離れていた男が最後に自分がその鼠小僧なんだと種明かしをするところで終わるのもひねりがなくてこの作者らしくないと思うが、情景描写が実にきめ細かくてまるで映画の一シーンを見ているよう。
まず二人の着物は親分と呼ばれる貫禄のある男は結城の紬に八反の平ぐけの帯、古渡り唐桟の袢纏、もう一人のやさ男は小弁慶の単衣に算盤玉の三尺。何のことや分からずウェブで調べたら親分のほうはかなり上等の着物を身に着けているが、やさ男が着ている小弁慶の単衣や算盤玉の帯というのは遊び人のいなせというかカジュアルな格好ということらしい。
着物以外にも宿の床の間の滝の掛け軸、伊予すだれ、2階の窓から見える海鼠壁に夕日が当たる様子など初秋の汐留の船宿の様子が目に見えるようだし昔の旅の様子などもきめ細かく描かれていて楽しめる。 
芥川の作品としては取り立ててどうというものではないが、この作家が並外れた感性の持ち主であることがよく分かる短編だ。
 

 
Img_0499m


 

|

« ラヴェル 『亡き王女のためのパヴァーヌ』 | Main | サン・サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調 op61 »

小説」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« ラヴェル 『亡き王女のためのパヴァーヌ』 | Main | サン・サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調 op61 »