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May 21, 2015

「最強の相棒」第4回

「K大学を出て今の会社に入りました」と言うので「それじゃKボーイなの?」と訊くと「はい、幼稚園からずっとです」とさらりと答える。
自宅の住所も高級住宅街として有名な場所だ。
結構お坊ちゃんなんだ、と改めて彼の素直な性格に納得した綾は、家に帰るとすぐに彼の会社名を検索して調べてみた。大企業ではなかったが立派な中堅企業で社長の名前は近藤だった。写真の風貌が彼によく似ている。社長の息子なんだと確信した。改めて彼のバッグとか時計などが高級なものであることに思い当たったが次に会ったとき、彼の会社を調べたことは黙っていた。

 しかし、2ヶ月を過ぎても彼は食事とおしゃべりだけのデートに終始するので綾は思い切って「私、来年は30歳になるんです。だから最近親がうるさくて」と遠回しに、どの程度の気持ちなのか探りを入れてみた。このまま不釣り合いな付き合いを続けるのは気が進まない。
「そうですね。僕は、綾さんさえよければこのままお付き合いを続けたいと思っています」彼は、綾の目を見ながら真面目な口調で言うので、綾も思わず「よろしくお願いします」と笑顔で答えた。

 その日彼と別れて家に帰る途中ずっと考えていた。
『お付き合いを続けるって、結婚もありってことだよね』何となく体が軽い。
それまでにも久保から何度か誘いの電話やメールがあったが、忙しいとか体調が悪いとか理由を付けて断っているうちに連絡がなくなった。今の綾には久保のことは眼中になかった。

 それから3週間ほどは、彼が忙しいとの理由でデートは無かったが、ある日電話が入った。
「今度の土曜日のお昼に会えないだろうか?」
その日は仕事が入っていたが上司に頼み込んでなんとか休みをもらった。
場所は二人でよく行ったレストランだったが、約束したのは午後の3時と中途半端な時間だった。
15分ほど早く着いて受付で名前を告げると奥のほうの個室に案内された。
3時を5分ほど過ぎたとき彼が入ってきたが、その後ろから見知らぬ年配の女性が続いた。綾が素早く立ち上がって会釈すると彼が緊張した顔つきで「突然ですみません。母です」とその女性を紹介した。

「浩の母でございます」女性は綾をじっと見つめたままそれだけ言うと綾の向かいの席に座った。
「初めまして。鈴木綾と申します」
綾は深々とお辞儀をしたあとも彼が女性の隣に座るまで立っていた。
彼は席に座ると綾にも座るように促し、慌てた様子でしゃべりだした。
「いや、急にこういうことになって申し訳ない。母がどうしても綾さんに会いたいと言うので・・・」
『だったら前もって言ってくれたらいいのに』綾は急すぎる展開に驚くと同時に浩をうらめしく思った。
しかし、コーヒーが運ばれウェイトレスが戻った後は彼の母親の一人舞台だった。

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