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May 15, 2015

柏井 壽 「鴨川食堂 おかわり」

株式会社小学館 2014年8月31日発行
前年に出版された「鴨川食堂」の続編にあたるもので、どちらも料理の名前がついた六話からなる短編集。
京都の下京区に看板も暖簾も出さないひっそりとした食堂がある。見かけによらずおいしい料理を食べさせてくれるのだがそれ以外の仕事として「食探し」という探偵業も請け負っている。
もう一度食べたい、食べさせたいという依頼人からの料理を調査して再現するのだ。
やってきた依頼人に、主人が出す料理はいかにも京都というもので格別凝ったものではないけれど食べたあとは誰もが満足して食探しを依頼する。主人が遠くにでも足を運び調べて作った料理は味の再現だけではなくそこに込められた夫婦、親子の愛情を確認できるものだった。
料理といっても鍋焼きうどん、とんかつ、肉じゃが、ハンバーグといったいわゆる食堂メニューがほとんどで、それゆえ再現も難しいが手を抜かない主人の努力で依頼人は満足する。
「鴨川食堂」も読んだが、今回はこの「おかわり」から「海苔弁」を選んだ。

大分の高校から大阪の体育大学へ進んだ学生が、中学生の時に父親が毎日作ってくれた海苔弁をもう一度食べたいとやって来る。
ギャンブルにはまって家庭を顧みず、結局妻に逃げられた父親も弁当だけは作ってくれたが毎日決まって海苔弁だったので恥ずかしくてかきこむようにして食べていた。底にご飯を敷き、醤油をかけたオカカを乗せた上にまたごはん、そして上全面が海苔という何の変哲もない海苔弁だが大阪に来て食べた海苔弁は味が違うという。
父親がどんな気持ちで毎日作ったか知りたいという願いに大分まで行って調べて作った海苔弁を食べた学生は同じ味に再会して涙する。
オカカだと思ったのは実は焼いた太刀魚の身を細かくほぐしたものにカボスを振りかけたものだった。父親は毎日食べても飽きないように工夫していたのだ。
父親に愛されていたことが分かった学生は晴れ晴れとした顔で店を後にした。

カボスが大分の特産だとは知っていたが太刀魚も全国トップクラスの漁獲量だと知った。京都だけでなく地方の特産品をうまく取り入れてほのぼのさせてくれた佳作。
 
内容も楽しいが依頼人に出す京風の料理が食べたくなるおいしい本だ。完ぺきな京都言葉満載なので関西以外の方は読みづらいかもしれない。


 

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