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May 18, 2015

ブログ小説 「最強の相棒」第1回

 披露宴も後半に入り、花束贈呈、両親の謝辞、新郎新婦の退場、お見送りまで進んで撮影もほとんど終わったとき、近くでビデオの撮影をしていた男と目が合った。
男はしばらくこちらを見ていたが、やがて「綾じゃないか」と声をかけてきた。
「あっ、久保クンだ」専門学校で同期だった久保孝だった。
会うのは3年ぶりだろうか。

 同期といっても彼は映像学科だったので普段顔を合わす機会はあまり無かったが、女子が少なかったので飲み会に誘われた時やときどき遊んだフットサルで知り合い、面白い男なので勤めてからも少しの間付き合ったこともある。
「久保クンって、ここで仕事してたっけ?」
彼の名前は弟と同じなのでいつも名字で呼ぶ。
「いや、今日はピンチヒッターなんや」

 綾もこの式場の専属ではなかったが、会場に慣れたカメラマンの方が便利なのでここでの挙式にはほとんど呼ばれているし、同じようにビデオ担当もほぼ決まった顔ぶれだった。
「今度飲まへんか?」機材を片付けていたらまた声を掛けられたので次の休みの日を教えてその日は別れた。撮影は終わったがこれから何百枚という画像をチェックして選びだす作業が残っている。
毎日忙しいので式場専門みたいな綾の次の休みは6日後の仏滅しかない。
「仏滅の日が式場カメラマンの休日というのも切ないな」綾はぼやく。
その仏滅の日の夕方、街の居酒屋で久保と飲んだ。
「綾が結婚式場にいるとはなぁ。仕事変わったんか?」

 綾はスポーツカメラマンを目指して写真専門学校に入り、就職のときは念願のスポーツ新聞社を受けた。学校の成績はよく、意欲も十分買ってくれたがこの仕事は体力勝負みたいな面もあってどうしても男が有利になる。結局落ちて学校の推薦で小さな広告代理店に入ったのだ。
広告代理店でのカメラマンの撮影対象は、よく言われるように衣食住に始まり、車、モデル撮影から高級住宅まで世の中のあらゆるものを写すと言っても過言ではない。
しかし、彼女の勤める広告代理店では新車やモデル撮影などを依頼するクライアントは無く、通販会社のカタログのような地味な仕事が多かった。

 それでも仕事は厳しく、入社しても1年間はほとんどカメラマンの助手として機材の準備から運搬、スケジュールの管理から慣れてくると車の運転までした。
正規のカメラマンになってからはさらに忙しくなり、最終電車で帰るのが当たり前のような生活だったので結局5年で辞め、今は主に結婚式場への派遣カメラマンとして働いている。
給料は安くなったが以前に比べると時間に余裕があるし、服や生活用品を撮るより幸せいっぱいのカップルの写真を写す方がそれはずっと楽かった。

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Comments

HABABIさん

ご明察です(^^
今後も綾をはじめとする鈴木家のお話を続けたいと考えています。

Posted by: よし | May 19, 2015 at 08:08 AM

前々回に書かれた小説における主人公の娘さんのお話ですね(*^^)v
前のお話と共に今回のタイトル「最強の相棒」との関連も心に留めながら、毎日楽しく拝見させて頂きます。

Posted by: HABABI | May 19, 2015 at 08:01 AM

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