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May 23, 2015

「最強の相棒」第6回

「あの、何代目とかいうのはそんなに偉いのでしょうか?」
「はあ?」女性は途端に不機嫌な顔に戻った。
「最初に武士として認められた方や事業を起こされた方は、一生懸命努力されたのですから立派だと思うのですが、それ以降の方々はただその家に生まれたか、お嫁に来ただけじゃないでしょうか」
言い終わった瞬間、女性の顔色が急変した。
「まあ、なんて失礼なことを!」
「だったら、あなたのお父様はどうなんですか。きっと、一生懸命努力されたすばらしい方なんでしょうね?」自尊心を傷つけられた女は、引きつった顔で反撃してきた。

 綾は後悔したがもう引き下がれない。
「はい、父は私たち家族を守るためによく働いてくれています。社長ではありませんが鈴木家の立派な当主だと思っています」そういった後、さすがに涙が出そうになったが必死でこらえた。
「まあ、ご立派なお父様ですこと。なんという会社でお勤めなのか教えて下さる?」
「株式会社○○の営業部長をしています」
綾の抵抗もそこまでだった。これ以上は持たない。
「お先に失礼させていただきます」軽く頭を下げてからテーブルを離れた。

 店を出てから、必死で涙をこらえて歩いているうちになんとか落ち着きを取り戻したが、乗り換えも、どう歩いたのかも記憶にないまま家に帰りついた。
「お帰り、早かったのね。食べてくるかと思った。ごはんどうする?」
いつものおだやかな母の声を聞いた途端、涙があふれ出てきた。
「いらない!」それだけ言って自分の部屋に入った。
着替えもせずベッドに飛び込むと布団をかぶって声を出して思い切り泣いた。

泣くだけ泣いてから後悔した。
彼の母にきつく言い返したことではない。社長の息子だということで結婚の夢を抱いたこと、そしてその彼が母親に一言も言い返せないマザコンだったことに気が付かなかったこと。
合コンで一緒だった女性のことを冷ややかな目で批判した自分が情けなかった。自分も同じ仲間だった。

 1時間ほどして落ち着いてからベッドを出てバッグの中のスマホを見ると彼からのメールが入っていた。
『ゴメン、君に本当に悪いことをした。もう一度会ってちゃんと話し合おう』
綾は短く返事を返してすぐに彼のアドレスや電話番号を消した。
『さようなら、今までありがとう』

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