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December 16, 2014

「夢」 第3回

 孝は、社会人になってからすぐに彼女ができた。
新入社員の研修が終わったあとの懇親会で知り合ったのだ。
彼女は、美しく聡明だったが、大学では準ミスにもなったというプライドのためか気位が高く少々扱いにくい面もある。
 ある日、彼女と有名なレストランで食事をすることになった。
待ち合わせてから彼女の好きなショップを巡ったりカフェでおしゃべりしたりして夕方まで楽しく時間を過ごしてからレストランに入った。
 彼女は、アクセサリーもあまり付けずシンプルな装いだったが、それがかえって美しさを引き立たせていた。二人で街を歩くと、男女を問わず彼らを振り返るのが心地よかった。

 店に入って予約した名前を告げると奥まったテーブルに案内された。
ウェーターが飲み物の注文に来たが、なぜかすぐに引き下がるとフロアマネージャーがやってきた。
「お客様、まことに恐れ入りますが、当店ではペットの同伴はご遠慮いただいております」
「えっ?ペットなんか連れていないよ」何を言うのかと思ってマネージャーの視線を追うと、テーブルの下に白い犬が寝そべっていた。
「きゃっ!」と彼女が叫んで立ち上がると、驚いた犬は次々とよそのテーブルの下に潜り込んで行く。
「うわ!」「きゃー!」とレストラン内は大騒ぎになった。
「僕の犬じゃないよ。知らない犬だ」と言ってもマネージャーの視線は冷たかった。

 結局、ウェーターたち何人かで犬は店の外へ追い出されたが、もうとても食事ができる雰囲気ではない。マネージャーの冷たい視線を後にすごすごと店を出た。
「別の店で食べようか」
店を出てから彼が言うと、彼女は冷めた顔でこう言って去っていた。
「こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてです」
彼女とはそれっきりになった。

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