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December 18, 2014

「夢」 第5回

 しかし、次の年の5月に開かれた大学の同窓会で新しい彼女を見つけた。
水泳部だったという大柄な彼女は、体育系らしく居酒屋でも喜んで付き合ってくれるので気楽に付き合えた。1週間の夏休みがとれたので一泊で海へ行こうということになった。
荷物を預けて着替え、海岸へ出ると普段オフィスの中にいると想像もできない夏の太陽がまぶしい。
「やっぱり、海はいいなあ」
海は好きだけど泳げない彼は、しばらく浜辺で遊んでからボートを借りると一緒に沖の方に出た。
「ボートは楽でいいわね」彼女もはしゃいでいる。

 しばらくボートを漕いでいると目の前の彼女の様子がおかしくなった。
「うしろ!うしろ!」彼の後ろを指さすと大声で叫びだした。
後ろを見ると大きな白い犬が座っていた。彼が振り返った途端とびかかってきた。
「うわっ!」彼はボートから海へ落ちた。
「助けてくれ!おぼれる!」
離れていくボートに何とか近づこうとするが、じたばたするほど沈みそうになる。
かなり水を飲んだあとで、誰かが身体を支えていることに気付いた。
彼女だった。

 彼を左手で支え、両足と右手で泳ぎながらボートまで来ると縁をつかんだ。
「はやくボートにつかまって!」
彼は必死でボートの縁をつかむと力を振り絞って乗り込み、そのまま中に倒れ込んだ。彼女は、あとから乗り込んでくると彼をうつ伏せにして背中を押し、水を吐かせた。
ボートにはもう犬の姿などどこにもなかった。
彼がしばらくして落ち着くと、今度は彼女がボートを漕いで浜に向かった。
結局その日は泊まらずに帰ることになったが、帰路はお互いほとんどしゃべらず、結局彼女とはそれっきりになった。

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