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December 14, 2014

ブログ小説 「夢」 第1回

 後ろから来た自転車が久美子の左側を通り過ぎたと思ったら急に前をふさぐように右に曲がった。
『あぶない!』びっくりして立ち止まったのでもう少しで倒れそうだった。
すると、あとから来た自転車も同じように目の前を横切り、さっきの自転車と2台で久美子の周りをぐるぐるとまわりだした。彼女が走って逃げられないのを知っている男の子たちはうすら笑いを浮かべている。
『もう、やめて!』と思うけれど怖くて声に出せない。

「やめろ!」突然大きな声がして、駅の方から走ってきた大きなお兄さんに一人が捕まった。
「オレの妹に悪さしたら許さんぞ!」男の子を捕まえたお兄さんはものすごい剣幕で怒鳴ったから二人は必死で自転車をこいで逃げていく。
「大丈夫?」お兄さんはさっきとはうって変わった優しい声をかけると久美子の肩を抱いてくれた。そのとたん、我慢していた涙があふれるようにこぼれ落ちた。
「おうちまで送るよ」お兄さんは彼女の手を優しく取るとゆっくり歩き出した。
「僕の妹だと言っておいたから、もう大丈夫だよ」
駅からの道を左に入ると昔ながらの古い小さな家が立ち並んでいる。

 久美子は、小さい時に遭った交通事故のため左足が少し不自由でよく男の子にいじめられた。そういうときでも家に帰ってからも絶対泣かなかったけれど、この時初めて涙を流したのだ。送ってもらう途中、この強くて優しいお兄さんと一緒に居たらずっと守ってもらえるのだろうなと考えていた。

「ありがとうございます。もう帰れます」家の近くまで来たとき、お兄さんの顔をしっかりと見つめた。そして、彼の後姿を見送りながら小さな声で祈った。
「神さま、大きくなったら、あのお兄さんのお嫁さんにしてください」
ふと、誰かに聞かれた気がして周りを見たが誰もいない。急に恥ずかしくなって、家の中に入ろうとして後ろを見たら白い犬がこちらを見ていた。

その後、住んでいた家が再開発のため立ち退くことになり、久美子が小学6年生になる春休みに引っ越しをしたのでもうお兄さんには会えなくなってしまった。
新しい家は都心への通勤も便利なベッドタウンにあり、公園も多いが繁華街へも結構近くて便利だった。そして、彼女が家の近くの高校に入ってからときどき同じ夢を見るようになった。
夕方、近くの公園のベンチで座っているとあのお兄さんが現れるのだ。
夢を見た次の日の学校帰りには必ず公園に行くことにした。

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