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December 17, 2014

「夢」 第4回

 しばらくすると彼も仕事が忙しくなり、デートどころではない毎日だったが、次の年の秋には合コンで相手を見つけた。3歳年上の彼女は、小柄で美人ではなかったが、やさしくて一緒に居るとホッとできるのだった。彼にも1歳上の姉がいたが、女子サッカー部にいた活発な性格はほとんどアニキ状態だったので、彼女こそ本当のやさしい姉のように思えた。
 ただ、かなりのやきもち焼きで、カフェなどで少しでも隣の女性を見ていると怖い顔をしてにらむのだ。だから、デートのときはできるだけ他の女性を見ないように気を付けていた。

 12月に入り、食事に行こうと並んで歩いていたら少し先に一人で立っていた小さな女の子に突然大きな白い犬が吠えかかった。
女の子が大声で泣き出したので、彼はすぐに駈け寄って足で犬を蹴りながら追い払ったが女の子は一向に泣き止まない。
「大丈夫だよ、もうこわくないからね」
彼がしゃがんでいくらなだめても女の子の声はますます大きくなる。
彼女は少し離れた場所でじっと見ているだけだった。
やがて、若い女性が駆けつけてきた。

「あなた、うちの子に何をしたんですか!」
「いや、犬が吠えて怖がったのでなだめているんですよ。ホントです」彼が必死で事情を説明すると、やっと納得した女性は今度は一転して愛想良くなった。
「まあ、そうでしたか、それはありがとうございます。いきなりひどいことを言ってごめんなさい」
「いや、いいんですよ」
笑顔になった女性は背が高く、女優かと思うほどの美人だった。

 女の子が泣きやみ、機嫌がよくなった彼女はよくしゃべった。
「この子は犬が好きでね、家にはマリちゃんという可愛いプードルがいるんですよ」
「いや、いくら好きでも大きな犬に吠えられたら大人でも怖いですからね」
「本当に勇気のある方で良かったわ」
女性の話は一向にとまる気配がなく10分以上もしゃべっただろうか、やっと解放されて周りを見渡したとき、そばにいるはずの彼女の姿はどこにもなかった。
しばらくして携帯に彼女からメールが入った『最低!!』
それで終わった。

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