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August 11, 2014

「最後の選択」 第2回

 もう一度人生をやり直せたらなぁ、といつになく真剣に考えながら歩いていたら突然男にぶつかった。ぶつかったというより急に目の前に現れたという感じで避けようもなく、男は目の前に崩れるように倒れてしまった。
「大丈夫ですか?」そばによると男は四つん這いになったまましばらく立ち上がれなかった。両肩を抱えて何とか立ち上がらせたが足元がおぼつかない。

 70歳くらいだろうか。髪は白いというより薄茶色に見える。顔立ちは穏やかで目も優しく怒っている様子はないので安心した。
もう一度「大丈夫ですか?救急車を呼びましょうか?」と言うと「ええ、大丈夫ですが家まで送っていただければありがたいです」と穏やかな声で言われた。「いや、すぐそこですから」と言われると、わざとではないにしても倒した責任はあるので送ることにした。

 家に帰る方向に少し行って左に曲がり狭い路地に入ると急に昔懐かしい光景が現れた。マンションなどはなく、古い民家が立ち並んでいる。5分も歩かないうちに男はその中の小さな古い家の前で止まった。「じゃ、私はここで」と帰ろうとしたら、「まあ上がってください」と言う。
家に無事着いたのだからもういいでしょう、と帰ろうとしたら「あなた、人生をやり直したいのでしょう」と、小さいがはっきりとした声で言われた。

 驚いて男を見つめると「ぶつかった時にあなたの思いが全部分かったのです」
気が付くと家の中に入っていた。
古い6畳間に通されて座ると、男は「あなたはこれまでの人生に二つ大きな悔いを残しておられますね。ご希望の年齢に戻して差し上げますからそこからあなたの人生をやり直してください。3回までやり直しが可能です。選んだ人生が嫌になった時は、そう強く思えばまた私に合うことができます」と真面目な顔で言った。

「では18歳の時に戻してください。大学受験からやり直します」彼は自分でも不思議なほど何の疑いもなく男に告げていた。

 18歳に戻った彼は、町でも有数の進学塾に通っていた。
ほぼトップクラスだったが目標のT大学に入るにはギリギリといった成績だった。
入試を1週間後に控えた日、塾で最後の仕上げをしてくれるという連絡があり、夜の8時ころ行くと初めて見る若い先生が小さな教室に案内してくれた。

 中に入ると驚いたことに来ていたのは自分一人だった。
「これが私のまとめた予想問題です。丸暗記するつもりでやってごらん」
30歳くらいの穏やかで優しい目をした先生は受験科目全部の問題をプリントした紙を20枚ほど渡してくれた。

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