« 「最後の選択」 第3回 | Main | 「最後の選択」 第5回 »

August 13, 2014

「最後の選択」 第4回

 17歳に戻った彼は町の塾に通っていたが成績は真ん中の上といったところだった。
彼は成績を上げることよりも塾の同じクラスの中のアイドル的存在の女生徒と親しくなることが夢だった。同じ思いを持つ男子生徒は多く、気の弱い彼はそばに近づくことさえできなかった。
2年生の12月のある日、講義が終わった後そのまま残るように言われ一人待っていると彼女が入ってきた。

「君も一緒なの?」講義の後、彼女もこの部屋に来るように言われたと語った。
やがて、初めて見る若い先生が入ってきた。穏やかで優しい目をしていた。
「あのね、講義じゃないんだよ。今度の日曜日にあるコンサートのチケットをもらったんだけど行かれなくなってね。代わりに行ってくれないかな」と2枚のチケットを差し出した。

 今大人気の男子アイドルユニットのコンサートだった。それも高校生では手の出ないいい席だった。
「うわー、行きたーい!」彼女は大喜びだ。
「二人で行くといいよ」先生もうれしそうだ。
「ねっ、一緒に行こう」彼女は彼の顔を真剣にのぞき込んだ。

 コンサートが終わった帰り、二人はファミレスに入ってさっきの興奮をいつまでも語り合った。
そして自然に次の日曜日のデートの約束をしていた。
クリスマスもデートをし、31日の夜に初もうでに行った帰りに彼女が言った。
「私、K学院を目指しているの。一緒に入ろう」
地元の私学の中では難関とされるK学院に入るため彼は猛勉強を開始した。塾では彼女とも成績を競い、励ましあったので辛いはずの勉強も楽しかった。

 猛勉強の甲斐あってK学院に入学してから二人は恋人宣言をしてお互いの家を行き来した。
真面目な彼と可愛い彼女は互いの家庭から好感を持たれ、二人の就職が内定したときには卒業後は当然そのまま結婚するものと思われていた。

 実際に、就職して3年後には彼らは結婚し彼女は仕事を辞めて家庭に入った。
結婚2年後に彼は東京へ転勤になり、1年後に長女が生まれその2年後に長男も生まれた。
長男が生まれたことを契機に彼はマンションを買った。東京都内は無理だったが通勤1時間半なら近県で何とか買うことができた。

 子供が二人いて自分の家を持ち、そして何よりも近所でも評判の可愛い妻がいることに彼は幸せをかみしめていた。家族で街を歩いていると男たちの目線が妻に集ることが分かり、女性は幾分嫉妬を含んだ眼差しで妻を見た。

|

« 「最後の選択」 第3回 | Main | 「最後の選択」 第5回 »

ブログ小説」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 「最後の選択」 第3回 | Main | 「最後の選択」 第5回 »