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August 2014

August 31, 2014

バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007

Bylsmaアンナー・ビルスマの独奏、1978年頃の録音。ビルスマのバッハを最初聴いたときはぎくしゃくしてスムーズな流れを感じなくて印象に残らなかったのですが、改めて聴きなおしてみると彼の噛んで含めるような素朴なアプローチが心に残るようになりました。1番という曲の性格もあるのでしょうが、歳のせいだと思いますね。昔はシュタルケルの豪快な演奏を好んでいました。
最近夏バテ気味なのですが、こういうときはバッハの無伴奏が疲れを癒してくれますnote

 
  10年ほど前のデジカメで写したもの。
  確かオリンパスの70万画素のカメラだった。
 
Rose1s


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August 29, 2014

卑劣! 許せない!

盲導犬が刺されたというニュースを聞いて怒りが止まりませんでした。
どんな場合でも吠えたり人を攻撃しないように躾けられた盲導犬であり、またその主人が目の不自由なことをいいことに何度も刺した犯人に怒りと共にある種の憐憫さえ感じました。
目がご不自由でも努力して社会活動をしている方そして一生懸命サポートする盲導犬に対し、分からないから大丈夫と刃物で刺した卑怯な犯人。
逮捕されたら器物損壊なんて罪ではなく、社会的卑劣犯罪として大きな罰を受けてほしいと願います。

犬は楽々子を産むので安産のお守りにされますが、実は大変我慢強くお産の時も苦しむ声をあげないだけだそうです。その犬を刺すとは・・・・
いかん、今度は涙が出てきました。


   セラも怒っています。

Ceras


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August 28, 2014

モーツァルト フルート四重奏曲イ長調 KV298

Mozart_masterマルク・グロウェルズのフルートとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる四重奏、1989年ベルギーでの録音。3楽章で10分足らずの曲だけど変奏曲形式の1楽章をはじめ作曲した1780年当時親しまれた旋律を用いているのでなかなかチャーミング。特にホフマイスターの歌曲をテーマにした1楽章は変奏も見事で各楽器のあいだでフルートが自在に歌って何度聴いても飽きません。


最近は涼しくて過ごしやすくなったけれど何となく夏の疲れが出てきたようで聴く音楽もハイドンとかモーツァルトばかりです。ベートーヴェンでも刺激が強くてマーラーなんか聴いたら入院するかも(笑)
 

   もう秋の気配ですね。
 
Img_0156s

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August 27, 2014

漢字問題

私、漢字はかなり読める方だと思うのですが書くのは相当お粗末です。
特に筆順がメチャクチャsweat01
仕事にパソコンを使いだしてからは読みさえ知っていれば簡単に呼び出せるのでますます漢字が書けなくなってしまいました。
英単語でも同じですが指先で覚えないと書けないのです。
ということで簡単な漢字検定の本を買って頭のトレーニング(ボケ防止ともいう)をしていました。
日常必要な範囲を扱った問題集なので読みは95%以上できたのですが、そのなかでもちょっと難しいなと思った漢字(熟語)を挙げてみます。

稲の出穂

釣果

沖天の勢い

唆される

読めなかった漢字や熟語は普段あまり使わないものというか特定の範囲で使われるものが多いようです。
だけど普通の漢字が書けないのはつらいsad


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August 23, 2014

ハイドン 交響曲第100番 ト長調 「軍隊」

Karajan_symカラヤン、ベルリン・フィルハーモニーの演奏、1982年1月の録音。2楽章と終楽章にトライアングルやシンバル、大太鼓が登場するので「軍隊」と名付けられている交響曲で編成も当時としては最大級でしょう。しかし2楽章の主題などチャーミングの極みといってよいもので3楽章のメヌエットと共にこの曲を魅力的にしています。本当はウィーンフィルの演奏で聴きたかったけれど手持ちのミュンヒンガーのものはもうオーケストラの言うがままであまりに無個性なので却下。バーンスタインとニューヨークのものは元気が良すぎてトルコ風交響曲みたいでこれもボツ。結局カラヤンのデジタル録音を選んだのですがフィナーレがちょっと元気がない以外はさすがに風格のある演奏です。
 
 

新聞やテレビの報道の被害のすさまじさを見て広島に住む姪っ子に「大丈夫?」とメールしたら「ここは何ともないけど山の向こう側はすごいことになってるよ」と返事が来ました。被害にあわれた方は本当にお気の毒ですがとりあえず姪っ子たちの無事が確認できて一安心でしたhappy01

    姪っ子の5歳と3歳の息子たち。
 
Birthdays_4


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August 20, 2014

今週は夏休み

今週はゆっくりと過ごしています。

7月の終わり頃からブログ小説の構想を練り、8月初めに書き始めて先週も毎日のように細部の手直しをしていました。
つまらない物語でも結構気を使うものです。
ということで今週はのんびりします(いつもだけど)。

これは先週の琵琶湖西岸での一コマ。
撮影者は息子ですがsweat01
最寄りの駅からここまで1時間+αで行けるので車で行くより便利です。
でも子供たちが小さい時は車にテントを積んでよくこの辺りでキャンプしたものです。

 
 
Biwako

 

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August 16, 2014

「最後の選択」 最終回

 子供たちが夕食を済ませた後の食卓で晩酌をしていると、妻が思い出したように言った。
「あなた、さっき私と出会う前にしゃがんで犬の相手をしてなかった?」
「えっ、俺は犬なんか知らないよ。人違いだろ」
「そうよね。薄茶色の大きな犬が誰かに『お手』をしてからあの狭い道に入っていったの。首輪もリードも付けてなかったけど飼い犬みたいだったわ」
「そういえば昔住んでいた家で大きな犬を飼っていたなぁ」

 小さい時、バイクにはねられて死にそうだった子犬を段ボール箱に入れて家に連れ帰った。
必死で手当てをしたら元気になり、反対する親に泣いてお願いして育てていたらレトリバーの雑種だったようで結構大きくなった。
一人っ子だった彼の弟として名前はジローとつけた。

 助けられた恩を知っているのだろうか、おとなしい犬だったが彼にはひときわ従順だった。いじめられて泣いて帰ると、すぐそばに来て慰めるように彼の手や顔をを泣きやむまでなめ続けた。

 毎日本当の兄弟のように遊んで育ったが、彼が小学6年生の時にジローは亡くなった。
父は「犬の寿命は12年くらいだからな。あきらめなさい」と言ったが、彼はその晩もう硬くなったジローの体をなでながら1時間近くも泣いた。

 彼が中学校に入ってから何度も引っ越しをしたあと10年前に今のマンションを買ったが、駅やその近くは昔とは様変わりしていて、路地の奥にあった古い家のことなどすっかり忘れていたのだ。
今、妻の話を聞いて穏やかな顔つきと優しい目をしたジローのことをはっきりと思いだした。

 次の朝、駅に行く手前で路地に入ると民家などは無く、広い更地があるだけだった。
「ここは先週でやっと古い家の取り壊しが終ってね。これから高層マンションが建つところです」工事監督と思しき男性が説明してくれた。
道に戻り、改札を通りながら彼は新しい人生が始まるのを感じた。


 == 「最後の選択」 完 ==

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August 15, 2014

「最後の選択」 第6回

「あと1回です」男が言った。
「最初にあなたに会った時に戻してください。元の人生で頑張ります」
「これが最後の選択ですよ。いいですね」
うなずくと「今度はあの日に戻るのではなくてその5日後に送りましょう。今までのことや私に会ったこともすべて忘れていますよ。ではこれでお別れです」
彼が握手しようと右手を出したら男はその上に右手を重ねるようにしただけで路地に消えていった。

 軽い足取りで家に向かっていたら道の途中で妻が立っていた。
「お帰りなさい」
「ああ、迎えに来るって珍しいな」
「ううん、卵が切れていたので買って帰るところなの」
「あのな、俺部長になった」
「えっ、どういうこと?」
「今日、臨時の異動があって営業部長になったんだ」
「じゃ、今の部長さんは?」
「地方の営業所へ課長として行くことになった」

 4月に就任した新しい本部長がこれまでの3年間の営業成績を各課と担当者別で詳細に調べた結果、今の部長になってから売り上げを優先するあまり利益を軽視する傾向があり、そのうえクレーム件数も大幅に増えたことが判明したのだ。
そして課別でみると彼の課の売り上げは伸び率こそ低いが、利益がきちんと確保されているのと納入後のクレームもほとんど無いことが分かった。

 事態を重く見た本部長は盆休み明けの18日に臨時の人事異動を発表したのだ。
課長に降格され地方に行くことになった部長の顔は青ざめていた。
本部長は彼に辞令を渡しながら「あなたのような人材こそわが社にとって必要なんです」と言った。
俺の人生は間違ってなかったんだと大きな声で叫びたかった。

 話を聞いて彼以上に喜んだ妻は並んで歩く間よくしゃべった。
「綾がカメラを使いたいのはね、今度野球部の試合を写したいんだって」
「へえ、野球部に好きな男でもいるのか」
「そんなんじゃないみたいよ。訊いてみたら」と妻はわけありげな笑顔を向けた。
「それから孝はね、塾でも上級コースに入れたのよ」

 妻と一緒に家に帰ると綾が玄関に出てきた。真剣な顔をしている。
「お父さん、ちょっと話があるんだけど」
娘の部屋に入ると熱く語りだした。
「私ね、スポーツカメラマンになりたい。だから写真専門学校に入るつもり」
「どうしてスポーツカメラマンなんだ」
「スポーツに限らないけれど最近は女性カメラマンがすごく活躍していて私もなりたいと思った」
「だからまず野球部でテストをするのか」
「うん、バッターが球を捉える瞬間なんかを写したい。いいでしょ」

勉強は嫌いだが女子サッカー部で活躍している娘がプロの重い機材を担いで走り回る姿を想像してみた。来年は短大を受けるものだと思っていたが、好きな道を見つけたのなら専門学校でいいだろう。
「分かった。明日から使い方を説明するよ」
「お父さん、ありがとう」娘は今まで見たことのないような笑顔になった。
 
 リビングに戻ると孝が座って待っていた。
「僕、上級コースに入れたしこれからしっかり勉強するからね」
「そうか、よかったな。頑張れよ」
「でもな、勉強をすることはいいことだけど人生は大学だけでは決まらない、ということも覚えておきなさい。辛いことから決して逃げずに自分の信念を通すことが大事なんだ」

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August 14, 2014

「最後の選択」 第5回

 恋人時代と変わらぬ優しさで彼を支え、母としてもきちんと子供たちを育てる妻と喧嘩することもなく、家庭に恵まれた彼は会社でも順調に実績を上げ43歳の時大阪営業支店長の辞令を受けた。
受験を控えた中学生がいるので単身赴任しかなかったが、1か月に2度は家に帰ったので忙しく働いていた東京時代とそれほどの差は感じなかった。
妻は、大阪へ行った当初は月に1度くらいは来ていたが、几帳面な彼が掃除も洗濯も結構まめにしていたので安心してそのうち来なくなった。

 大阪で半年ほども経つと部下を連れて行く常連のスナックも見つけ、時々一人で顔を出すようになり、そのうち仲良くなるホステスもできたが真面目な彼は店で馬鹿話をするだけで十分だった。東京には今でも可愛いと言える妻と幸せな家庭がある。冒険をする気は毛頭なかった。

 ある金曜日の夜、馴染みのホステスとかなり飲んだ後、遅くなったので近くまで送ろうということになり、一緒に店を出たが彼女は悪酔いしたらしく気分が悪いと言い出した。
足元も危ういのでタクシーを止めて送り届けようとしたが、その時には口もきけない状態だったので放っておけず、仕方なく社宅まで連れてきた。抱えるようにして部屋の中に入れ、何とかリビングのソファーに寝かせ水を飲まそうとしたとき奥の部屋から妻が現れた。
「あなた、何をしてるの!」悲鳴のような妻の声が部屋中に響いた。
いくら事態を説明しても幾分正気になったホステスが説明しようとしても錯乱した妻は聞く耳を持たなかった。

 何とかタクシー会社に連絡してホステスを送りだしたあとも泣き続ける妻の横で彼は疲れ果てていた。
「私は騙されていたのね」ほとんど寝ずに似迎えた朝、妻がポツリと言った。
ちがうんだと何百回説明しても、派手な衣装のすそを乱した若い女が夫の部屋のソファーで横になっていた姿を目に焼き付けた妻の耳には入らなかった。土曜日が夫の誕生日だったので黙って大阪に来てサプライズで驚かそうとした妻にとってはまさしくむごい仕打ちだったのだ。
妻から話を聞いた子供たちの反応は冷ややかだった。「サイッテー!」「バッカじゃないの!」
 
 半年後、妻と離婚する羽目になった。
高校の時から彼以外の男と付き合ったこともなく、結婚して20年ひたすら夫を信じ切っていた妻にとってはショックが大きすぎたのだ。
マンションを譲り養育費を払うことに異存はなかった、というより何を言っても受け付けない妻にもう弁明する気力が失せ果てていた。
何もかも嫌になった彼が、駅の改札を出てあの古い家に向かおうとしたら男は道の途中に立っていた。

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August 13, 2014

「最後の選択」 第4回

 17歳に戻った彼は町の塾に通っていたが成績は真ん中の上といったところだった。
彼は成績を上げることよりも塾の同じクラスの中のアイドル的存在の女生徒と親しくなることが夢だった。同じ思いを持つ男子生徒は多く、気の弱い彼はそばに近づくことさえできなかった。
2年生の12月のある日、講義が終わった後そのまま残るように言われ一人待っていると彼女が入ってきた。

「君も一緒なの?」講義の後、彼女もこの部屋に来るように言われたと語った。
やがて、初めて見る若い先生が入ってきた。穏やかで優しい目をしていた。
「あのね、講義じゃないんだよ。今度の日曜日にあるコンサートのチケットをもらったんだけど行かれなくなってね。代わりに行ってくれないかな」と2枚のチケットを差し出した。

 今大人気の男子アイドルユニットのコンサートだった。それも高校生では手の出ないいい席だった。
「うわー、行きたーい!」彼女は大喜びだ。
「二人で行くといいよ」先生もうれしそうだ。
「ねっ、一緒に行こう」彼女は彼の顔を真剣にのぞき込んだ。

 コンサートが終わった帰り、二人はファミレスに入ってさっきの興奮をいつまでも語り合った。
そして自然に次の日曜日のデートの約束をしていた。
クリスマスもデートをし、31日の夜に初もうでに行った帰りに彼女が言った。
「私、K学院を目指しているの。一緒に入ろう」
地元の私学の中では難関とされるK学院に入るため彼は猛勉強を開始した。塾では彼女とも成績を競い、励ましあったので辛いはずの勉強も楽しかった。

 猛勉強の甲斐あってK学院に入学してから二人は恋人宣言をしてお互いの家を行き来した。
真面目な彼と可愛い彼女は互いの家庭から好感を持たれ、二人の就職が内定したときには卒業後は当然そのまま結婚するものと思われていた。

 実際に、就職して3年後には彼らは結婚し彼女は仕事を辞めて家庭に入った。
結婚2年後に彼は東京へ転勤になり、1年後に長女が生まれその2年後に長男も生まれた。
長男が生まれたことを契機に彼はマンションを買った。東京都内は無理だったが通勤1時間半なら近県で何とか買うことができた。

 子供が二人いて自分の家を持ち、そして何よりも近所でも評判の可愛い妻がいることに彼は幸せをかみしめていた。家族で街を歩いていると男たちの目線が妻に集ることが分かり、女性は幾分嫉妬を含んだ眼差しで妻を見た。

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August 12, 2014

「最後の選択」 第3回

 受験当日配られた用紙を見て驚いた。先週もらってほぼ丸暗記した問題とほとんど同じだった。彼は無事にT大学に合格し、両親は大喜びで彼のために東京でアパートを借りてくれた。
「学費と部屋代は送るからアルバイトなんかせずに勉強するんだよ」
4年間しっかり勉強して文句のない成績で卒業した彼は中堅の商社へ入り5年後には同じ大学で付き合っていた彼女と結婚した。彼女は卒業後大手の証券会社に勤めていた。

 結婚して3年経ったときニューヨークへ転勤になった。妻は会社を辞め彼と共にアメリカへ渡ったが、子どもがいなかったので時間を持て余し滞在中の5年間の間にニューヨークの大学でPh.D.を取得した。
東京へ戻った彼は都内にマンションを買って本社勤務を続けていたが、妻は大学時代の教授のつてで、ある私立大学に講師として勤めるようになり3年後には35歳の若さで准教授に抜擢された。

 端正な容姿と冴えた論理の展開、説得力のある話術そしてニューヨークで鍛えられた英語が生きてテレビにも頻繁に出演するようになった。
そうやってお互い忙しく過ごすうちに、2日も顔を合わさないことが珍しくなくなり共に食事をする機会も減っていった。

 そして2年後、彼が40歳になった時に異動で彼は大阪支店長の辞令を受け取った。支店長だから栄転ともいえるが東京から離れることは彼が目指していた本社の取締役への道が絶たれたことを意味した。
仕方がない。支社長の道をめざすだけだ、と自らを慰めながらその日は早く帰宅した。

「私は行かないわ」彼が大阪への転勤を告げた時、妻は即座に答えた。
「そうだな。僕が単身で行くよ」と言うと
「あのね、もうこういう生活はやめましょう」と妻が切り出した。
「夫婦といってももう形だけじゃない。私はもっと自分の可能性を広げたいの」
「それってどういうことなんだ?」
「ごめんなさい。私たち別れた方がいいと思うのよ」

 返す言葉は無かった。確かに形だけの夫婦になっていた。立派なマンションに住み、何不自由無い生活だと思っていたが、ただ一緒に住んでいただけだったのだ。
話し合った末、マンションは妻に譲ったが、彼女は自分のわがままだからと言って金銭は一切受け取らなかった。そのころにはもう彼以上の収入があったのだ。
妻と正式に離婚して独りになったあと、全身を襲う空しさを抱いて彼は大阪へ向かった。

 夜、駅の改札を出ると自然に足があの古い家に向かった。
家の前にあの男が立っていた。
もう家の中には入らず男に言った「今度は17歳の時に戻してください。大好きだった彼女に会いたい」

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August 11, 2014

「最後の選択」 第2回

 もう一度人生をやり直せたらなぁ、といつになく真剣に考えながら歩いていたら突然男にぶつかった。ぶつかったというより急に目の前に現れたという感じで避けようもなく、男は目の前に崩れるように倒れてしまった。
「大丈夫ですか?」そばによると男は四つん這いになったまましばらく立ち上がれなかった。両肩を抱えて何とか立ち上がらせたが足元がおぼつかない。

 70歳くらいだろうか。髪は白いというより薄茶色に見える。顔立ちは穏やかで目も優しく怒っている様子はないので安心した。
もう一度「大丈夫ですか?救急車を呼びましょうか?」と言うと「ええ、大丈夫ですが家まで送っていただければありがたいです」と穏やかな声で言われた。「いや、すぐそこですから」と言われると、わざとではないにしても倒した責任はあるので送ることにした。

 家に帰る方向に少し行って左に曲がり狭い路地に入ると急に昔懐かしい光景が現れた。マンションなどはなく、古い民家が立ち並んでいる。5分も歩かないうちに男はその中の小さな古い家の前で止まった。「じゃ、私はここで」と帰ろうとしたら、「まあ上がってください」と言う。
家に無事着いたのだからもういいでしょう、と帰ろうとしたら「あなた、人生をやり直したいのでしょう」と、小さいがはっきりとした声で言われた。

 驚いて男を見つめると「ぶつかった時にあなたの思いが全部分かったのです」
気が付くと家の中に入っていた。
古い6畳間に通されて座ると、男は「あなたはこれまでの人生に二つ大きな悔いを残しておられますね。ご希望の年齢に戻して差し上げますからそこからあなたの人生をやり直してください。3回までやり直しが可能です。選んだ人生が嫌になった時は、そう強く思えばまた私に合うことができます」と真面目な顔で言った。

「では18歳の時に戻してください。大学受験からやり直します」彼は自分でも不思議なほど何の疑いもなく男に告げていた。

 18歳に戻った彼は、町でも有数の進学塾に通っていた。
ほぼトップクラスだったが目標のT大学に入るにはギリギリといった成績だった。
入試を1週間後に控えた日、塾で最後の仕上げをしてくれるという連絡があり、夜の8時ころ行くと初めて見る若い先生が小さな教室に案内してくれた。

 中に入ると驚いたことに来ていたのは自分一人だった。
「これが私のまとめた予想問題です。丸暗記するつもりでやってごらん」
30歳くらいの穏やかで優しい目をした先生は受験科目全部の問題をプリントした紙を20枚ほど渡してくれた。

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August 10, 2014

ブログ小説「最後の選択」 第1回

今日から1週間お盆特集としてブログ小説を連載します。
しばらくの間お付き合いのほどお願いします。
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 改札を出て家に帰る道に出て、一郎は今日部長に言われたことを思い出していた。
「粗利も大事ですが、まずは売り上げを伸ばさないと営業ではないでしょう」入社は彼よりあとだが、T大学卒の威力は大きく、彼を追い抜いて去年部長になったやり手だ。一応先輩の彼に対し丁寧な口をきくけれど皮肉たっぷりに言われると心が重くなった。

 設計から製造に行き営業技術を経験して営業に来た彼は、受注に際してはきちんと各部署に見積もらせ粗利が出ない価格では出さないのでどうしても受注が少なくなる。
しかし期ごとの成績になると各担当者や課の売り上げが真っ先に評価されるのだ。
もうお盆休みに入った13日というのに彼だけ緊急に呼び出され、上半期の売り上げの悪さをなじられたあげく言われたことが「近々臨時の異動がありますからね」だった。

 異動って降格なのか左遷なのだろう。地方に飛ばされたら受験を控えた子供たちを置いて単身赴任するしかない。でもどちらにしても今でも苦しい家計をさらに圧迫するだろう。
それにその娘や息子とは毎日のように衝突している。
昨日の夜は、長女の綾が急に一眼レフを貸してくれと言い出した。
「いったい何を写すんだ?」
「何でもいいでしょ」
今までカメラなんか見向きもしなかった娘に簡単に大事な一眼レフは貸せない。
しつこく理由を聞き出そうとしたら「もういい!」と自分の部屋に入ってしまった。
そばで聞いていた妻が「いいじゃない。貸してあげたら」と言うので「カメラは精密機械なんだ。おもちゃ代わりに気まぐれに使うものじゃない」と言ったら「あなたってケチねぇ」ときた。
ケチじゃない。ものを大事にしているだけだ。

 息子の孝とはかれこれ1週間近く口をきいていない。
もう2年生だから受験を真剣に考えてほしいのだが、あまり身が入らないようで成績も中の上くらいで止まっている。一度、ある程度の大学に入って大きな会社に入らないとこれからの人生がどうのこうのと、お決まりの説教をしたら「それっておとうさんができなかったことを子供に押し付けているだけじゃないか」と反発してきた。さすがに怒る気力も無く息子が外に出ていくのを黙って見送るだけだった。
この時も妻は息子の肩を持った。「あの子もいろいろ悩んでいるのよ」

 4歳下の妻が自分を慰めてくれたことなど一度もない。同じ会社で知り合い、それなりに恋愛をして2年後無事に結婚した。結婚当初こそ素直に「ハイ、ハイ」と従ってくれたが長女が生まれてからは赤ん坊の世話にかかりきりになり、長男が生まれてからはほとんど無視されている。それどころか最近は生活費のやりくりの苦労話を聞かされることばかりだ。

 確かに大会社ではないし49歳になってまだ営業課長だから給料はそれほど多くはない。自分の信念を曲げずに通したため出世は遅くなったがそういう言い訳は一切しないので妻にはわからない。家族のために嫌な思いをし、ぐちも言わずに働いた自分の人生ってなんだったのだろう。

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August 09, 2014

ノートPCの修理

私のことではありません。
高校からの友人がノートPCの電源部が接触不良なので直したいと言っておりました。電源部は怖いのでやめた方がいいよと諭したのですが、メーカーに依頼したら数万円、壊れて買い換えても数万円、不安な気持ちで使うのはイヤ。だったらやるしかないでしょ、と決断してもう一人の友人と解体新書じゃなく解体手順書を見ながら3時間半。無事修理完了とのメールがきました。
私もHDDの交換を死ぬ思いでしたことを思い出しましたが、友人も下手するとベキッと折れそうだったと恐怖のコメントを書いておりましたimpact
ちなみに彼は理系出身ですが電気が特に得意だったわけじゃありません。

とにかくおめでとう good
 
 
Notepcs


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August 06, 2014

男のなで肩

鏡を見ても分かりませんが私はなで肩なんだろうと思うのです。
1.肩掛けバッグが必ずずり落ちてくる。
歩くときは必ず斜め掛けにするし、カメラは首から掛けます。眼鏡もかけているのでもう完璧なニッポン人です。

2.肩で受話器を受けることができない。
首で受話器をはさみながらささっとメモしたりキーボードを打つ人はカッコいいな。
私は左手で受話器を持ってなにかでメモ用紙を抑えながら右手で書き込みます。
不便ですthink

最近では結構肩幅のある女性も多いのですが、朝ドラの花子役の吉高さんはかなりのなで肩のように見受けられます。
着物を着るとそう見えるのでしょうか。

理想の肩ですか?
水泳選手は男女問わずすべて。
体操の内村航平選手は最高good
十字懸垂は神の技だと思いますnote


 

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August 04, 2014

バッハ ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調 BWV1050

Bachbrバウムガルトナーの指揮、ルツェルン弦楽合奏団の演奏、1978年5月の録音。何回か記事にしたと思うけれどこの暑さで忘れました(笑)
2枚組の全曲のどの曲をいつ聴いても心に深くしみこむような稀代の名演奏ですnote。6曲の中からあえて超ポピュラーな5番を選びましたがその作為のない演奏に深く感動させられました。スークのヴァイオリンだとかニコレのフルートの素晴らしさは言うまでもないのですが、それらが浮かび上がるのではなくふんわりと合奏の中に溶け込んでいるのがこの演奏の素晴らしさですね。
いろいろ他の選曲も考えていたのですが暑さの厳しい今日は爽やかなこの曲を選んで正解でした。
 

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August 02, 2014

師の教え

高校の時の英語の教師は鬼のように恐ろしく授業は恐怖そのものでした。
あてられてちゃんと訳ができなかったときはわざわざ席まで来られて時には「このバカモノが!」と雷が落ち、常習者にはげんこつのご褒美を頂くこともありました。coldsweats02
ちなみに女生徒も例外ではなくまあ軽くですがコツンとやられるのです。
気が小さく臆病者で怖がりで体面だけを気にする私は、とにかく前の晩必死で予習していたのでご褒美を頂かなくても済みました。
おかげさまで英語だけは人並みにできるようになりましたが、上の学年になり穏やかな先生になった途端何とも言えない物足らなさを感じたのです。あのいつやられるかというスリルが楽しみになっていたのでしょうね。

さて、この先生で忘れないのは「オレは夜寝る前は絶対に歯を磨く」という言葉です。「どんなに大酒を飲んで酔っ払っていても歯だけはしっかり磨くんだ」と言われ、ギラリとそろった見事な歯を見るとなるほどと妙に納得するのです。以後、学生時代キャンプをしても寝る前は暗闇でも歯を磨きましたし、社会人になっても朝と寝る前は必ず磨きます。休みの日は昼食後も磨きます。もう習慣ですね。
おかげさまで今でも中学の時に治療した1本を除いて虫歯は1本もありません。note
師の教えとは有り難いものです。
 
 
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