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July 12, 2014

真山 仁 「黙示」

2013年2月20日 株式会社新潮社発行
農薬事故を軸に放射能汚染、食糧問題、エネルギー問題などを絡めた社会派小説だが多くの参考文献と綿密な取材による現実的な内容は物語の域を超えている。
農薬を散布するラジコンヘリの事故で通常散布するときの200倍近い濃度の農薬を浴びた子供たちが入院する。症状は重く、社会問題としてマスコミに取り上げられた農薬メーカーの開発責任者は苦境に立たされる。しかしそれは農薬自体の問題ではなく、軽率な取り扱いをした使用者の問題であることも事実なのだ。
医者から出る薬でさえ一面では人体に対して害を与える。指示量の100倍も飲めば栄養剤さえ体調に異変をきたすだろう。誤って子供や赤ちゃんが飲まないようにするのは使用者の責任だということはよく分かっていても人のせいにするモンスターが居ないとも限らない。
取り扱いを誤れば大抵の交通機関は危険だ。車、電車、新幹線、飛行機それぞれの危険度に合わせて資格(免許)、マニュアル、訓練、点検など法律による厳密な管理によって安全が保たれているのだ。無茶な積載をすれば船も容易に横転するだろう。
この本では食糧自給の問題と併せて遺伝子組み換え作物にも言及している。現在遺伝子組み換え作物は直接人の口には入らないが、家畜の飼料に使われた場合その肉やミルクを摂取したらどうなるのか。
自国の農産物は危険物質の汚染リスクが高いので日本のキャベツをキロ1000円で買うという某国のお金持ちの話には驚く。
唯一自給できた原子力を止めた結果石油、天然ガスなどの輸入が増え貿易赤字が増えた話など、あるバランスを崩せばすぐに立ち行かなくなるこの国の現状を改めて考えさせられる。
資源が何もないと言ってよい日本。その中でも食料とエネルギーの自給レベルを上げることは非常に重要な問題なのだ。食料でほぼ自給できるのは米だけであり、小麦はわずか15%、畜産物は57%だがエネルギーとなると2011年以降の自給率はわずか12%、原子力以外では4%しかない。戦争をするしないという論議の前に食料、エネルギーを輸入できなければ生きていけない日本の現状をしっかり見据えるべきだと思う。
PS:食料のデータは農水省、エネルギーは経産省のHPを参考にした。

 
 
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