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May 26, 2014

今野 敏著「果断」

株式会社新潮社 平成22年2月1日発行

「隠蔽捜査」シリーズの第2弾である。
警察官による連続殺人事件を闇に葬らなかった主人公は、多くの警察官僚の地位を守ったにもかかわらず家庭内の不祥事もあって、都内の警察署長に降格された。
署長といっても実務は署内の各課で処理される。彼は膨大な書類にひたすら印鑑を押し続ける業務やあまり意味のない地域懇談会への出席に違和感を覚える。
別の管内で強盗事件が起き、犯人の1人が拳銃を持って管内の小料理屋に人質と共に立てこもったため出動したSATが犯人を射殺し、無事に人質を解放できたが犯人の拳銃に弾は残っておらず、SATに射撃を許可した彼の責任が追及される。
単なる言い争いがあったという情報から不審なものをかぎ分ける古参刑事のカンから始まる後半の思いもよらぬダイナミックな展開がすばらしい。
犯人を射殺した件で警察庁から査察の呼び出しあった時、かつての部下に言った「俺はいつも揺れ動いているよ。ただ、迷った時に原則を大切にしようと努力しているだけだ」というセリフが建前で行動することを嫌う彼の魅力を端的に表している。
夜中でも事件の連絡があれば署や現場に急行する彼は、自負するだけあって優秀なエリートであるが、急病で妻が入院したときはコーヒー一杯も入れられず着替えの場所も分からないことに愕然とする。暖かいコーヒーや料理そして着替えなどは、必要な時自動的に目の前に出てくるのが当然だと思っていた彼は初めて妻の存在の大きさに気付く。
しかし、反省して病室で付き添おうとする彼に「国のために働きなさい」と突き放す妻のほうが一枚上手であった。
今回は、実際の警察の活動を俯瞰したように描いており、臨場感が素晴らしいのと家庭の描き方も無理や無駄が無く、一流の推理小説を読んだという満足感を味あわせてくれる。
山本周五郎賞・日本推理作家協会賞受賞作。
   

到来した緑の季節がうれしい。

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