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December 22, 2013

クリスマスの贈り物 14

 それからは本当に慌しかった。
 お腹が目立たないうちにと、安定期になったころを見計らって式場を探したが、大きな会場はどこも予約で一杯なので、孝と相談して家族と友人だけで行う小さな式場を選んだ。

 大きなケーキも豪華な演出もいらない。簡素でアットホームな式にしたい、と孝が言うと、向こうの両親も賛同してくれた。父は定年後、嘱託で気楽な身分で働いているので誰も呼ばなくていい、とこちらもOK。
 孝は3LDKの中古のマンションを買い、必要なものだけ買い足して移り住んだ。

 子供が男の子だと分かると、父が頼みもしないのに名前を考えだす。
「エエのを考えた。二人の名前を取って『あやたか』いうのはどうや」
「それはお茶の名前です。もう、ふざけんといて!」
 彩も母も怒りながら笑ってしまう。
「お父さん、ホンマに楽しみなんやなぁ」と母もうれしそうだ。
12月26日が予定日と知ったときは、「彩と一緒やね」と本当に喜んだ。

 ところが、12月24日の昼過ぎからおなかが痛くなってきた。
 通院している病院に電話したら、すぐ入院してくださいと言われる。 
 孝の車で病院に行くと、少し早くなりますが大丈夫だといわれ一安心。
 母も父の車で来て、付き添ってくれるという。
「どうしますか?」と病院で訊かれたけれど、家族の立会いは断った。 
 母も一人で生んだと言うし、これは私の仕事だ、孝には自分の苦しむ姿を見せたくない、と覚悟を決めていた。
 結局、母が時々様子を見て、孝は廊下で待つことになった。

 夕方から、本格的に陣痛が始まり、何度も襲ってくる経験したことの無い激しい痛みに耐えて、日付が変わった夜中12時過ぎに、無事3400グラムの男の子を出産した。
「お疲れ様、本当にありがとう」孝が、そっと手を握ってくれたときはさすがに涙が溢れた。

「今日は25日やから、この子はキリストさまやな」赤ん坊の顔を見た父がはしゃぐ。
「ウチは浄土真宗で、毎朝仏壇拝んでるやないの」と、つっこみたかったけれど疲れきって言葉が出ない。でも赤ちゃんの顔を見たら、それまでの痛みも疲れもすっ飛んでしまった。

 本当にいろんなことがあったこの一年間。
 去年のイブの日は、この病院の緊急受付で泣いていた。
「でも、結局私はクリスマスに2回もすてきな贈り物を頂いたんや」
「去年は孝さん、そして今年はかわいい赤ちゃん」
 満ち足りた思いで、ぺしゃんこになったおなかを触っていたら、再び深い眠りに落ちていった。


- 「クリスマスの贈り物」 完 - 

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Comments

HABABIさん
ご愛読ありがとうございます。
2回目のクリスマスに出産させるためにかなり急速な展開を強いられました(笑)
二人だけではなくその家族もみんなにプレゼントが来たのですね。

Posted by: よし | December 23, 2013 at 10:18 AM

よし様

ハッピーエンドにするのか、気にして読んでいました。
プレゼントは、思わぬ形で来ることがありますね。ここでは、主人公以外の人にとっても、プレゼントになっていました。
HABABI

Posted by: HABABI | December 23, 2013 at 09:25 AM

u子さん
まっすぐな気持ちで弱者に優しい人に聖夜の贈り物があるというテーマで書きました。
彼の父が搬送された病院で彼の子供を生むというのもひとつの落としどころです。
大阪弁なのでほんわかしたムードになりました。

Posted by: よし | December 22, 2013 at 10:12 AM

よしさん
ハッピーエンドでしたね。ほんわか、楽しい気持ちを小説から頂きました。お疲れ様でした。

Posted by: u子 | December 22, 2013 at 09:15 AM

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