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December 2013

December 30, 2013

来年もよろしくお願いします

いよいよ明日は大晦日。
今日は墓参りをしてお寺さんにご挨拶を済ましてホッとしました。
帰ってから奥さんが最後の買出しに行っていよいよおせち料理に取り掛かります。

ということで今年のブログはこれにて終了。
また来年よろしくお願いしますhappy01
 
   
庭に咲いていた赤と黄色のバラ。
暖かいリビングに置くとすぐに開ききってしまうのがつらい。

EOS-Mで クリック→大

   
   
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December 28, 2013

レハール 「金と銀」

あっという間に年末ですね。
まだクリスマスグッズを片付けておりませんがsweat02
車は洗車しました。

 
さてYouTubeで「金と銀」を見つけました。
日本にもよく来ているアンドレ・リュウと彼の楽団で、ダンスの映像が見られます。
序奏の後、ゆったりとメロディが始まると同時に何組ものカップルがすべるように踊りだしますがとても豪華な雰囲気で、実際の舞踏会のために作曲されたということがよく分かる映像ですheart02


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December 26, 2013

ブラームス漬け

小説を連載している間も当然音楽は聴き続けていました。
最初はベートーヴェン、飽きてきたら今度はブラームスと重いものばかりですが、久しぶりに音楽を堪能した思いがしますnote
交響曲は全部聴き、今はピアノ協奏曲の1番。
ブレンデルの独奏
シュミット=イッセルシュテットの指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
1973年5月の録音
大変重厚な演奏です。

いまはじっくりと聴きこむのにはいい季節なんですね。
2大Bを聴いたから今度はバッハか、とはいかないようですがsweat01
多分Wだと思います。

  
    
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December 25, 2013

グルーバー 「きよしこの夜」

Christmas_karajanベルリン・フィルハーモニーブラスアンサンブルの演奏で。有名なキャロルを4本のトランペットと4本のトロンボーンという珍しい編成で演奏したもの。さすがにベルリンフィルの名手たちのアンサンブルは派手さのかけらも無いしっとりとした味わいがあります。クリスマス曲のバロック曲を集めたCDなので他の演奏はカラヤンの指揮なのでジャケット写真に顔が出ますが無視してください(笑)
カテゴリー分けをどうしようか迷ったのですが一応室内楽にしました。

クリスマスといっても静かに暮らすだけですが、正月にやってくる息子たちにどんなおせちを出そうかと考えています。

   
 
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December 23, 2013

メリー クリスマス

2週間にわたって連載したブログ小説が終わってホッとしていますnote
いわゆる小説の作法とかを知らず思いついて書き始めたので、細かいところが冷や汗ものでしたが一応自分なりの決まりみたいなものを作って進めました。
大阪弁で書くと感情移入がしやすいのと、何となくほわっとした柔らかさが出たのではないかと思っています。
主人公の二人は今の若い人とはかなり違うと思うのですが、あくまで私が好感を持つタイプとして設定しました。
本当のクリスマスの意義は弱者に力を与え、自分にそういうことが出来ることを感謝することだと思います。

さて、昨日は私たち夫婦にもプレゼントをいただきました。
もうすぐお正月なので何となく慌しいですね。

   
これも久しぶりのEOS-Mで クリック→大
  

   
 
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December 22, 2013

クリスマスの贈り物 14

 それからは本当に慌しかった。
 お腹が目立たないうちにと、安定期になったころを見計らって式場を探したが、大きな会場はどこも予約で一杯なので、孝と相談して家族と友人だけで行う小さな式場を選んだ。

 大きなケーキも豪華な演出もいらない。簡素でアットホームな式にしたい、と孝が言うと、向こうの両親も賛同してくれた。父は定年後、嘱託で気楽な身分で働いているので誰も呼ばなくていい、とこちらもOK。
 孝は3LDKの中古のマンションを買い、必要なものだけ買い足して移り住んだ。

 子供が男の子だと分かると、父が頼みもしないのに名前を考えだす。
「エエのを考えた。二人の名前を取って『あやたか』いうのはどうや」
「それはお茶の名前です。もう、ふざけんといて!」
 彩も母も怒りながら笑ってしまう。
「お父さん、ホンマに楽しみなんやなぁ」と母もうれしそうだ。
12月26日が予定日と知ったときは、「彩と一緒やね」と本当に喜んだ。

 ところが、12月24日の昼過ぎからおなかが痛くなってきた。
 通院している病院に電話したら、すぐ入院してくださいと言われる。 
 孝の車で病院に行くと、少し早くなりますが大丈夫だといわれ一安心。
 母も父の車で来て、付き添ってくれるという。
「どうしますか?」と病院で訊かれたけれど、家族の立会いは断った。 
 母も一人で生んだと言うし、これは私の仕事だ、孝には自分の苦しむ姿を見せたくない、と覚悟を決めていた。
 結局、母が時々様子を見て、孝は廊下で待つことになった。

 夕方から、本格的に陣痛が始まり、何度も襲ってくる経験したことの無い激しい痛みに耐えて、日付が変わった夜中12時過ぎに、無事3400グラムの男の子を出産した。
「お疲れ様、本当にありがとう」孝が、そっと手を握ってくれたときはさすがに涙が溢れた。

「今日は25日やから、この子はキリストさまやな」赤ん坊の顔を見た父がはしゃぐ。
「ウチは浄土真宗で、毎朝仏壇拝んでるやないの」と、つっこみたかったけれど疲れきって言葉が出ない。でも赤ちゃんの顔を見たら、それまでの痛みも疲れもすっ飛んでしまった。

 本当にいろんなことがあったこの一年間。
 去年のイブの日は、この病院の緊急受付で泣いていた。
「でも、結局私はクリスマスに2回もすてきな贈り物を頂いたんや」
「去年は孝さん、そして今年はかわいい赤ちゃん」
 満ち足りた思いで、ぺしゃんこになったおなかを触っていたら、再び深い眠りに落ちていった。


- 「クリスマスの贈り物」 完 - 

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December 21, 2013

クリスマスの贈り物 13

「君のしたことは順序がちがうだろ!」父が怒り出した。
「すみません、順序が間違ったことはお詫びしますが、私は決して悪いことをしたつもりはありません」孝は頭を下げない。
「でも、お怒りはよく分かりますので、どうか気の済むまで私を殴ってください」と、父を見つめて言った。
「何だと!」父が立ち上がった。
「お父さん、やめて!」「あなた!」
 一緒にいた弟は、いつでも止められるように父のそばに立っている。

 父がそばまで来ても孝はじっと父を見つめたままだ。
 彩と母は、立ち上がったまま凍りついたようになっている。
 突然、父の顔がくしゃくしゃに歪んだ。
「娘を、娘を、どうか、よろしく、頼みます」振り絞るように声を出すと、孝の手を両手で強く握った。
「はい、必ず幸せにします。先ほどは、失礼なことを言って申し訳ありません」孝は父に手を握られたまま立ち上がり、深々と頭を下げた。
 みんな、力が抜けて椅子に座りこむ。

 落ち着いてから、孝があらためてみんなに説明した。
「僕は、彩さんと絶対結婚しようと思っていました。だから赤ちゃんが出来た、と聞いた時は本当にうれしかったんです」
「お父さんのお気持ちはよく分かります。でも、あそこで謝ったら、生まれてくる赤ちゃんに悪いと思ったのです」
「要するに君は確信犯やったんやな。でも、そういう率直さに彩が惚れたんやろうな」
 さすがに父は良く分かっている。孝さんは、まさしく私の直球ど真ん中の人なんです。

 夕方からご馳走を並べ、みんなで飲んで食べた。
 母は、多分人生で一番うれしそうに料理を作り、父も先ほどの剣幕はどこへやら、いつできるのか、と初孫の誕生に上機嫌になっている。
 弟は食べるだけ食べると2階の自分の部屋に姿を消した。
 いつの間にか雨が静かに降っている。
 幸せな夜が過ぎていった。

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December 20, 2013

クリスマスの贈り物 12

 いきなりで驚いた。もちろん嬉しいけれど、知り合ってまだ2ヶ月にもならないので少し躊躇した。
「私のどこが良くて結婚しようと思ったんですか?」
 自分が彼の父親を助けたことで評価されたのなら、それは嫌だ。
 自分を魅力的な女として認めてくれたのかどうかが問題なのだ。
 孝は、父親が助けられたとき、誰もが知らん顔で通り過ぎていくのに、彩が連れの男と喧嘩別れまでして怪我をした父親を助けたことを聞いていた。でもそのことは胸の奥にしまっている。

「明るくて素直なところ、それから口を大きくあけて笑うとこ、かな」
 確かに彩はよく笑うし、手で口を隠したりしない。
 孝は、笑うとき口に手を当てる女性は嫌いだ。とくに両手で鼻をはさむようなしぐさを見ると「気取ってる」と腹が立つ。
 本当に上品に育った人は、そんなことをしないはずだ。

 また、彩のあっさりしたメイクやシンプルなおしゃれもいいなと思う。
 そして、何よりも孝の心をつかんだのは、彼女の言葉遣いがきれいだ、ということだった。
 普段の会話はくだけた大阪弁だけど、大事な話ではきちんとした敬語を使う、そういったけじめのある態度に惹かれたのだった。
 
「いや、どこがと言うんじゃなくて、彩さんの全部が好きなんです。だから、僕と結婚してください」
 孝は彩の手を取り、目を見つめて再び言った。
「ハイ、うれしいです」彩は、気持ちを一杯にこめて答えた。
 涙がこぼれ出る。
 次の土曜日に指輪を作りに行った。
 孝の行動は速く、あれよあれよという間だった。

 3月の終わりごろ、体調の異変に気づき、調べたら妊娠が分かった。 
 母にはすぐに報告した、が父親には内緒にしておいた。

 孝は4月に入ってから彩の家に来た。彩と並んで両親の前に座ると「彩さんと結婚することをお許し願います」と頭を下げる。
 父は、とうとう来る日が来たか、という顔をしていたが、母がつい、うれしそうに「彩ね、出来たのよ」と口走ったから、ややこしくなってしまった。

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December 19, 2013

クリスマスの贈り物 11

 最近の娘の言動から、この出会いが非常に大事なものである、ということを直感で見抜いた母は、あらゆる人脈と情報網を駆使して、超忙しい正月の美容院を予約して連れて行き、嫌がる振袖を着せた。

「馬子にも衣装やな」振袖を着て、ぬっと目の前に立っている背の高い娘を見て父が言った。
「また、セクハラ発言や」と思ったけれど、一応ほめているので訴えるわけにはいかない。
「でも、可愛い娘を馬子呼ばわりするのは失礼や。尊属侮辱罪ってないんやろか」と考える。

 着慣れない振袖をもてあましながら彼の家に行った。
「あの時は本当にありがとうございました」家に上がると、両親に深々と頭を下げられて恐縮する。丁重にもてなされ、あれこれ訊かれたが精一杯努力しておしとやかに振舞った。
 孝の父親は、もう痛みもとれて大丈夫だと言う。安心した。

 7日は、両親特に母の強い要望で、孝が彩の家に呼ばれることになった。今度は、逆に孝が両親のお礼の言葉を述べ、そのあとで「彩さんとお付き合いしたいので許して欲しい」と切り出した。
 彩は「やった」と思ったが、黙って父の様子を伺う。母は満面の笑みで、促すような目つきで父を見た。「いや、男みたいな娘ですが、どうかよろしく」父も、真面目だけど率直にものを言う孝が気に入った様子だ。

 孝をじっと観察していた弟は、彼が帰ってから「ええやんか」とOKサインをした。
「あんたに許可貰う筋合いはない」と言ったけれど、家族みんなからの評判がいいのはやっぱりうれしい。

 それからは1週間に一度、主に土曜日にデートを重ねた。
 一人では行けなかったバッティングセンターにもよく行った。
 ときどき彼の2DKのマンションに行き、料理を作ったりして過ごしたが、何回目かに行った夜はそこで泊まった。
 バレンタインの日、プレゼントを渡すと、その場で「結婚しよう」とプロポーズされた。

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December 18, 2013

クリスマスの贈り物 10

 やっと我に返って家に電話をした。
「ああ、お母さん、おなか空いた。何かある?」
「あんた、食事したんとちゃうの?」
「いろいろあって、食べてない」
「エッ、何かあったんか、大丈夫?」
「大丈夫です。もうすぐ帰るからとにかくご飯よろしく」
 不機嫌な顔で出て行った娘が、腹ペコなのにいやに機嫌がいいのに首をかしげながら、夕食の残りを確認する。

 次の日、駅で木戸と会ってから食事をした。
 といっても、クリスマスだからどこも一杯で、結局ファミレスに入る。
「すみません。午前中は病院でオヤジの退院手続きをしたりで、予約するヒマが無かったんです」と、申し訳無さそうに言う。
「いえ、私ファミレスへ来たの久しぶりですから、懐かしいです」
 彩は、木戸と居られるだけで充分幸せだ。

 食べ終わってからはカップルばかりの繁華街を歩いた。
 疲れるとカフェに入り、また歩き、と夕方まで歩いて、しゃべって、食べたりしながら楽しく過ごした。

 彼の名は、孝(たかし)。36歳だというが結構若く見える。
 やはり小さな工場系の会社だということで彩とよく話が合う。
 服装は結構無頓着だけど気取りが無いし、話も面白く、とにかく快活で明るい。一緒にいると楽しくて安心感がある。
「この人、ストライクや」彩は確信した。

 駅までの帰り道で「仕事が終わった日に飲みませんか」と誘われた。
 どちらも28日だということを確認しあい、初めて携帯番号の交換をした。
 28日は、夜の9時頃まで飲んでから家の近くまで送ってもらった。
 帰る途中、初詣に行こうと誘われたが、その後で両親がどうしてもお礼をしたいから家に来て欲しい、と言う。
 3日に約束をした。

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December 17, 2013

クリスマスの贈り物 9

「すみません。バイクで来ているので駅までしか送れませんが」と、申し訳無さそうに言う。
「本当にバイク王子が来たんや」思わず叫びたくなった。
 病院を出て駅まで歩き出したとき「バイクはどうされるんですか?」と訊いた。
「あなたを送ってからまた病院へ戻ります」
「すみません、お手数をおかけします」
「いえいえ、大切な恩人ですから当然です」

 せっかくのチャンスだからゆっくりと並んで歩きたいのに、結構早足なのがつらい。わざと左側を歩いて彼の左手をよく見たけれど、指輪はない。でも、付けない男も多いからな、と余計なことまで考える自分が浅ましい。
 とくに話すこともなく、短い時間で駅に着いてしまった。せっかくのバイク王子なのに、これだけでお別れだと思うと切なさが胸にあふれる。

 駅の構内に入ると、彼が改まったように向き直り「本日は、本当にありがとうございました。お礼といってはなんですが、もしよろしければ明日お食事をご一緒させていただけないでしょうか」と言った。
「エッ」期待はしていたけれど、いきなりなのですぐに返事が出来ない。
「もう、誰かとお約束されているのでしょうか?」
「いえ、そんなのありません」思わず大きな声を出してしまった。
 我ながら恥ずかしい。
「じゃぁ、明日の午後1時に、場所はここでいいですか?」
「ハイ!」と明るい声で返事する。

 何かあったときは、と言いながら手帳に自分の携帯番号を書き、破って渡してくれた。足早で病院に戻る彼の後姿を見送りながら、彩はまだ夢の世界に浸っていた。

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December 16, 2013

クリスマスの贈り物 8

 ふと、夜中に目を覚ました。
 そうか、今日は25日、クリスマスだと思うと、これまでの出来事が次々と思い出された。

 あの日、受付のベンチで涙を拭いていたら、やっと、例の看護師さんがやって来た。「検査では骨折は無いようです。ただ、痛みがひどいので今は点滴をして安静にしています」と報告してくれ「もうすぐご家族の方が来られるので、それまで待ってくださいね」と告げる。
「いえ、私、もう帰ります」と、立ち上がると「すみませんね。そのときの様子を聞きたいのと、お礼を言いたいと言われるのでね。すぐに来られるそうですよ」と、押しとどめられた。

 駅まではそう遠くないので歩いて行って電車で帰ろう、と考えるとおなかが空いてきた。どっと疲れも出て、うつむいたまま座っていたら、緊急外来のドアが開いて誰かが入ってきた。靴音がそばまで来て、男の声で「失礼ですが、伊藤さんでしょうか?」と言う。
 驚いて見上げながら「ハイ、そうですが」と返事をすると、「木戸と申します。このたびは父が大変お世話になりました。本当にありがとうございました」と相手が頭を下げた。彩も慌てて立ち上がり「いえ、たまたま通りかかっただけです」と頭を下げる。

 二人がほぼ同時に頭を上げてお互いの顔を見る。彩より10センチ以上は背が高い。30歳くらいだろうか。短い髪で、はっきりとした顔立ちが日に焼けている。思わず見つめていたら相手が微笑んだ。
 急に、彩の心臓の動きがおかしくなり、身体が一瞬フワリと浮いたようになる。「直球や」顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

「ちょっとオヤジの様子を見てきます。お送りしますのでもう少し待ってくださいね」木戸はそう言うと病室のほうへと早足で行った。10分ほどで戻ってくると「痛みがあるのと、もういい歳なんで安全を見て今晩は入院させることにしました」と言い、受付の人となにやら話してから一緒に外に出た。

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December 15, 2013

間奏曲

この1週間、初めてのブログ小説の連載を試みました。
昨日で「クリスマスの贈り物」前半が終わり、明日から後半の連載を始めます。
実は書き溜めたものも毎日のように細部に変更を加えています。
物語を書くって難しいです。

最近、ひとつの事に固執した生き方から離れようと思っていました。
音楽を聴く、写真を写す、本を読む、いずれも大好きな趣味ですが、小説を書くということには自分で何かを創造出来るというアクティブな楽しみがあります。
『ペトルーシュカ』の人形たちのように、設定した登場人物に魔法をかけると血が通い、活き活きと動き出すという経験は私に新鮮な感動を与えてくれました。
また機会があれば挑戦しようと思っています。

後半もお読みいただければ光栄です。


  
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December 14, 2013

クリスマスの贈り物 7

 10分ほどで救急車が来た。
降りてきた隊員に倒れた状況を説明すると、さっさとストレッチャーに男を乗せて積み込もうとする。
「私も一緒に行きます」と言うと「ご家族ですか」と訊かれたので、「はい」と答えたら乗せてくれた。乗り込むときに歩道を見ると、イサムが怖い顔でこちらを見ている。
「早く出して!」心の中で叫ぶと同時に救急車はサイレンを鳴らしながら発進した。

 15分ほど走って病院に着くと、ストレッチャーはすぐに検査室へ運び込まれた。当直の看護師が来て、改めて状況を聞かれたので、倒れたときの様子と家族ではないけれど心配なので付いて来たことを話すと、住所と名前を訊かれた。家族に連絡がつくまでしばらく待っていて欲しい、と言われる。

 誰もいない受付のベンチに一人座り、落ち着いてくると今日の出来事が頭を駆け巡った。
「私、なんでこんなとこにいるんやろか」 あんな男のそばに居たくないから救急車に乗ったけれど、帰りは一人だ。
 せっかくのイブの日。あのおじさんさえ倒れなかったら楽しく過ごせたはず。そう思うと、後悔の心が芽生えだす。
 イサムだって私と過ごすために計画してたんだから、怒って当たり前だ。食事して、話が盛り上がって、酔いも回っていいムードになったら私もその気になっていたかもしれない。
 いや、もう今日の出来事はすっぱり忘れよう。
 明日のクリスマスは年賀状を書こう。
 しかし、一人でクリスマスを過ごした後、30歳を迎えた日の出勤はあまりにも寂しい。
「私ってどうしていつもこうなるんやろ」口に出すと、思わず涙があふれ出た。

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December 13, 2013

クリスマスの贈り物 6

 15分ほど歩いたとき、目の前を歩いていた男が歩道の石につまづいて倒れた。
「あぶない!」彩はとっさに駆け寄った。もう老年と言っていい男は、倒れたときに右の腕と肩を強く打ったようで、なんとか上半身は起こしたが立ち上がることが出来ない。
 そばにしゃがんで「大丈夫ですか?」と声をかけたが、かなり強く打ったようでしばらく声が出ない。かなり痛そうなので骨が折れているのかもしれない。

「ええから、行こうや」寄ってきたイサムが言った。
 無視して「救急車、呼びましょか?」と言うと、「いや、大丈夫です」とやっとしゃべった。
「ほら、大丈夫言うてるやろ」
「何言うてるんですか、起きられへんのに放って置かれへんでしょ!」
「通りすがりの人の面倒見る必要ないやろ」
「困っている人を助けるのは当たり前やないの!」とうとう、いつもの彩になった。
「6時にレストランの予約してるから、そんなおっさん置いといて早よ行こ」

 彩の心の中で何かはじける音がした。
「遅れるのが嫌なら、あなただけ行ってください!」
「アホか、ホテルまで予約したのに一人で行けるか!」
 こいつ、とうとう本性を現したな。

「私は、この人を病院に連れて行きます。これ、レストランのキャンセル料」財布から1万円札を出して、彼の手に押し付けた。
 もう、彼の方を見ずに「おじさん、病院へ行きましょう」と声をかけたが、やはり立ち上がるのは無理みたいだ。バッグから携帯を出すと119を呼んだ。


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December 12, 2013

クリスマスの贈り物 5

 イサムは、黒いジャケットに、胸元を開けたピンクのシャツと細身のジーンズという姿で立っていた。ピンクのシャツに一瞬ひいたけれど、顔には出さず笑顔で挨拶した。
 少し歩いてからしゃれたカフェへ入る。飲み物が来てから好きな音楽のことを訊かれたので、ワーグナーです、と答えてやった。

『ワルキューレの騎行』以来クラシックが好きになった。でも、さすがにワーグナーは長くて重いので普通のオペラを聴くと、ほとんどのヒロインが死ぬことが分かる。
「なんで、女ばっかり死ななあかんの」と調べたら『ドン・ジョバンニ』では、女たらしの男が地獄へ落ちることを知った。「ざまあみろ」や。
『レオノ-レ』は、妻が男の格好をして敵の城へ潜入し、夫を救うというストーリーに、やっぱりベートーヴェンは偉い、と改めて尊敬した。

 でも、勤めてからは時間もないので普段はポップスを聴いている。中島みゆきの、男に媚びない歌がいいな、と思っているが最近は、西野カナもお気に入りだ。歌もいいけど、あのもっちゃりした三重の言葉でのおしゃべりがいい。

 彼が「AKB48なんか、ええんとちゃう?」と訊く。一瞬「エッ」と思ったけれど「いえ、あんまり」と、おとなしく返事しておく。中島みゆき、とでも言ったら、少しは見る目が変わったのに、ホンマ残念な男や。
 彼は、音楽の話をあきらめて野球の話に切り替えた。
「好きな選手はだれ?やっぱり大和?」と訊く。
「大野さんです」
「はぁ??」
「昔、広島のピッチャーやった大野豊です」
 目が点になっている。
 42歳まで現役だった大野投手は、実績もさることながら、その渋い風貌が女子ソフトのメンバーからは結構人気があった。顧問の先生は「お前らの好みは渋すぎや」とあきれていた。

 5時を過ぎてから店を出た。そろそろレストランで食事かと考えると、おなかも空いていたので少しは楽しみな気分になる。外はもう暗くなったけれど、華やかなクリスマスイルミネーションが気持ちを明るくしてくれる。歩きながら取りとめのないおしゃべりをしていくうちに、少しずつ彼とも打ち解けていった。

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December 11, 2013

クリスマスの贈り物 4

 ワインバーで4人でおしゃべりしたとき、恵美があれこれ彩の話で盛り上げてくれた。
 彩がソフトボールをしていたことから野球の話になる。彼女のポジションはショートだと言うと「ショートいうたら、やっぱり鳥谷やね」と恵美のカレが言う。
「いえ、私は大和のファンなんです」
「へぇ、あいつはセンターと違った?」
「最初はショートやったんですよ。めっちゃ上手でした」
「彩さんも上手やったんでしょ」とイサムが乗ってくる。
「いえ、ぜんぜんです」気乗りのしない返事でかわす。
 名前で呼ぶのはまだ早いんや。

 また、恵美が盛り上げにかかる。
「彩の手はホンマ大きいんよ」と、自分の手を合わせてくる。たしかに小柄な恵美より一回り以上大きく、並の男の手くらいはある。
 ソフトの練習が終わり着替えをしたあと、みんなで顧問の先生に挨拶をして帰ろうとしたら「伊藤、グローブ外してから帰れや」と言われた。
「もう外してますけど」
「そうか、それ、お前の手やったんか」

 みんな大うけだったが、やはり男の前で言われるのは恥ずかしい。どれどれ、と恵美の後でイサムが手を合わせようとしてきたので、さっと手を引っ込めた。
 その夜は早めに切り上げ、恵美たちは続きがあるようだったので、店を出てからお開きになった。
 帰り際に、恵美が寄って来てそっと訊く「どうやった?」
「カーブでしかもボール球や」
「あんた、何様や思てるの」あきれる恵美は、カレと腕を組んで雑踏の中へ消えていった。
 送る、としつこく迫るイサムに、クリスマスイブのデートを約束して何とか一人で帰ったが、携帯番号は教えなかった。

 イブの日に一人は嫌だ、という思いだけでデートの約束をしたものの、最初会ったときの目線を思い出し、地味な服を選び、下もパンツにした。夕食まではいいけれどそこから先はどうしょう、などと考えると気持ちが滅入る。
 そういう気分で出かけるときに、オヤジに「気をつけてな」と言われたのだった。

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December 10, 2013

クリスマスの贈り物 3

 男嫌いではもちろんない。
望みが高いわけでもない、と思っているが、あるとき同じ会社の恵美に「もういいかげんにしたら。白馬の王子はおらへんよ」と言われた。
「白馬なんか言うてへん。バイクで来てくれてもええねん」
「へぇ、バイク王子ってコマーシャルでやってない?」
「それ、バイクを売るならバイク王、やんか!」

「そやから、彩が待っているツボってなんやの?」
「うーん、直球のストライクかな。カーブはいやや」
「直球ってどんなん?」
「私をまっすぐ見つめる視線、はっきりした目鼻立ち、きりっとした口元、背は私より高くて、太めはイヤ」
「ストライクの条件は?」
「笑顔がステキなこと、率直で、積極的で、正直で、スケベやないこと」
 黙って聞いていた恵美が、だんだんあきれ顔になる。
「カーブでも、とにかくストライクやったらええんやろ?」
「うーん、直球ど真ん中を待ってるんやけどね」
「あんた、一生独身やな」と、バッサリ切り捨てられた。

 でも、彩は、外見や容姿のいい男を待っているのではない。
 だらしない服装や落ち着きのない目線、よくしゃべるくせに肝心なことを決めようとしない態度、そしてうそをつく男が嫌いなのだ。
 そして、何よりも積極的に自分をリードして欲しいと思う。彩は決して強い女ではない。自分の部屋に入ってよく泣くし、外に出ると一人で食事も出来ない。ただ、理屈に合わないことをしたり、弱い人に優しく出来ない男が許せないのだ。

 恵美が、彼女のカレの友達でイサムという男を紹介してくれた。歳は28だと言う。
「もうすぐクリスマスやし、ぜいたく言わんと付きあってみたら」と紹介してくれたけれど、もうひとつピンと来ない。背もまずまず高く、やさしいマスクをしてるし、服装もおしゃれだけど、挨拶したとき上から下まで値踏みをするようにサッと目線を走らせたのが気になった。
 その日は珍しくミニをはいていたのだった。
 何となく獣のにおいがする。

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December 09, 2013

クリスマスの贈り物 2

 学校のブラスバンドで『ワルキューレの騎行』を聴いて、カッコいいなと思っていたが、空を翔る馬を操り、勇ましく戦って死んだ勇者を乗せて神のもとへ送り届ける乙女のことだ、と聞いてなおさら気に入った。

 中学から高校まではソフトボールに打ち込んだが、短大時代はそれなりに男友達を作ってデートもした。
 彩は美人ではないが、身長は162センチと高いほうで、ソフトボールをしていたおかげか、筋肉質だけどスタイルも良く、きりっとした顔立ちと姿勢のよさで見栄えがする。
たまにミニスカートをはくと、自分でも悪くないと思う。しかし、はっきりした性格だからなのか、男と付き合っても長続きしない。

 彩はぐいぐい引っ張ってくれる男がいいのに、「どこ行きましょうか?」「何食べます?」って、いちいち訊くなよ、と思うような草男(くさおとこ)が多い。
 たまに、強引に引っ張ってくれる男がいた、と思ったら最初のデートなのに例の場所へ連れて行こうとする。
 必死で車から降り、タクシーに飛び乗って逃げたことも何度かある。
「草でも獣でもない、フツーの男っておれへんのやろか」と真剣に悩んだ。

 販売とか営業が苦手だったので、就職は小さな工場系の会社を選んだ。
 面接のとき「弊社に応募した動機は?」と訊かれ、「社長の制服姿がカッコいいので」と答えて大笑いされた。後日、社長面接があり「私の制服どうですか?」と言われたので、率直に「ステキです」と答え、無事に合格した。
 入社のあとで部署の希望を聞かれたので、「制服で仕事がしたい」と言ったら工務課へ配属された。どうやら社長の印象が良かったようだ。

 もちろん事務仕事が大半だが、彩だけは工場のおじさんたちと同じ制服を着て、時には軽トラックでヘルメットや安全靴を運んだりもする。
 体格のいい彼女が制服を着て現場をうろうろしても違和感はなく、おじさんたちは親切だったが、若い男性が少なく、それらしい出会いの無いのが寂しい。


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December 08, 2013

クリスマスの贈り物 1

「何が心配なん?」後ろも見ずに彩がドアを開けて出て行った。
「いや、何でもないけど」それだけ言うと父はリビングに戻る。
 12月24日の昼過ぎ、出かけようとする娘につい「気をつけてな」と言ったら、何が気に障ったのか機嫌悪く切り返されてしまった。

 伊藤 彩(いとう あや)今月の26日で30歳になる。
 最近、両親の顔を見ると何か言いたそうにしていることがよくある。お気持ちはよく分かっておりますよ、と思っている。
 短大を出て勤めてからもう10年になる。彼がいなかったわけではないが、1年以上続いたことが無い。28歳になったときはさすがに少し焦ったが、いくらでも出現してくる二十歳の娘っ子とは違うという自負もある。
 化粧もあっさりと仕上げるし、髪の毛も染めずに肩から少し下の辺りにして、軽くパーマを当てる程度だ。ギラリと光るような口紅を見ると、焼肉を食べた後みたいや、と思う。
 小さいときから活発な遊びが好きで、母が勧めるピアノも断固拒否し、男の子に混じってボールを蹴って遊んでいた。4歳のときに出来た弟は、姉に似ずおとなしく、公園に遊びに行くときはいつも姉の陰に隠れるようにしていた。
「神様がつけ間違えたんと違うか」よく父が言った。今から考えると、あれはセクハラやと思う。親でなかったら訴えてるとこや。

 中学生になっても相変わらず性格は男っぽく、2年生のとき苛められている男子を助けたこともあった。少しどもり気味の男子生徒がからかわれ、言い返せないのをいいことに、何人かに小突かれたあげく蹴られようとしていたのを見たとき、プチッと切れた。
「あんたら、いい加減にしとき」と間に入ったら、「うるさい!女は引っ込んどれ」と肩を突かれたので、わざと大げさに後ろに倒れるようにして、教卓をつかんでひっくり返してやった。
 ドカーンという派手な音がした後、隣の部屋から音楽の女先生が飛び込んできた。
 彩が床に倒れている姿を見て動転する。「あんたら、女の子に暴力ふるって!」飛び出していった女先生の替わりに、組長と呼ばれた恐ろしい体育の教師が入ってきて、男子生徒は連行されていった。そのあと事情聴取で呼ばれたときは、自分で足が滑ったんです、とかばってやったのでその生徒は苛めた男子にあやまることで開放された。
 あとで、彩はからかわれた男子に近づいて言った。「あんたも男やったら、やり返さなあかんやないの!」弱いものいじめは大嫌いだ。しかし自分で自分を守ろうとしない人間も情無いと思う。
そのときに付いたあだ名が『ワルキューレ』だ。

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December 07, 2013

ブログ小説連載のお知らせ

今年になってたくさんの本を読んできたのですが、ふと自分でも書きたくなってポツポツと書いておりました。
明日から2週間ほど拙作を掲載しますので、気分が悪くなってもかまわないと仰る方は、バケツをご用意してお読み願えれば光栄ですcoldsweats01
なお、連載中のコメント欄は3日に1回くらいの割合で開くことにします。


   
 
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December 05, 2013

池の水面

最近は暖かくて穏やかな日が続きますsun

散歩するときは出来るだけコンパクトデジカメを持って行きますが、風のほとんど吹かない池の水面が印象派の絵のようだったので1枚写してみました。小さく写っているのはカイツブリです。

 
ixy51s で クリック→大

 
 
Img_0970m

 
 

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December 03, 2013

L・アンダーソン 「ラッパ吹きの休日」

運動会の定番曲ですが、普通に聴いても楽しいnote
映像はオーストリアの地方オーケストラのサマーコンサートです。
ラッパ手が4人になっていますが、それぞれ形(多分調性も)が異なる楽器を持っているようです。
ちょっとくだけた編曲を加えてとっても楽しい演奏。
ハープさんは身体でリズムをとっているし、ヒマなピッコロさんはおしゃべりはするし、と見ていたら肝心の指揮のお姉さんがあまり仕事をしていないようですhappy01
休日どころか必死で吹きまくるラッパのお兄さんたちに大拍手good
スーパースピードの快演sign01


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December 01, 2013

ヨハン・シュトラウスⅡ 「春の声」

1987年のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの映像。
指揮はカラヤン、コロラトゥーラ・ソプラノで歌うのはキャスリーン・バトル。「春の声」を難しいリリック・コロラトゥーラで聴いたのは、リタ・シュトライヒ以来だと思うけれど、可憐な声で正確に歌うバトルはお見事としか言いようの無いできばえです。左手に見えるヴァイオリン氏が満足げな顔で弾いているのがいいnote
カラヤンは大雑把に腕を振るだけでほとんどオケにお任せ。オケは結構テンポを揺らす歌に合わせるという名人たちの名演奏です。
でも、これがもう20年前だったら有色系の歌手がニューイヤー・コンサートで「春の声」を歌うことは不可能だったでしょう。ベルリンフィルに日本人を積極的に登用したカラヤンは人種差別をしなかった大指揮者でもありました。

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