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December 17, 2013

クリスマスの贈り物 9

「すみません。バイクで来ているので駅までしか送れませんが」と、申し訳無さそうに言う。
「本当にバイク王子が来たんや」思わず叫びたくなった。
 病院を出て駅まで歩き出したとき「バイクはどうされるんですか?」と訊いた。
「あなたを送ってからまた病院へ戻ります」
「すみません、お手数をおかけします」
「いえいえ、大切な恩人ですから当然です」

 せっかくのチャンスだからゆっくりと並んで歩きたいのに、結構早足なのがつらい。わざと左側を歩いて彼の左手をよく見たけれど、指輪はない。でも、付けない男も多いからな、と余計なことまで考える自分が浅ましい。
 とくに話すこともなく、短い時間で駅に着いてしまった。せっかくのバイク王子なのに、これだけでお別れだと思うと切なさが胸にあふれる。

 駅の構内に入ると、彼が改まったように向き直り「本日は、本当にありがとうございました。お礼といってはなんですが、もしよろしければ明日お食事をご一緒させていただけないでしょうか」と言った。
「エッ」期待はしていたけれど、いきなりなのですぐに返事が出来ない。
「もう、誰かとお約束されているのでしょうか?」
「いえ、そんなのありません」思わず大きな声を出してしまった。
 我ながら恥ずかしい。
「じゃぁ、明日の午後1時に、場所はここでいいですか?」
「ハイ!」と明るい声で返事する。

 何かあったときは、と言いながら手帳に自分の携帯番号を書き、破って渡してくれた。足早で病院に戻る彼の後姿を見送りながら、彩はまだ夢の世界に浸っていた。

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