« 間奏曲 | Main | クリスマスの贈り物 9 »

December 16, 2013

クリスマスの贈り物 8

 ふと、夜中に目を覚ました。
 そうか、今日は25日、クリスマスだと思うと、これまでの出来事が次々と思い出された。

 あの日、受付のベンチで涙を拭いていたら、やっと、例の看護師さんがやって来た。「検査では骨折は無いようです。ただ、痛みがひどいので今は点滴をして安静にしています」と報告してくれ「もうすぐご家族の方が来られるので、それまで待ってくださいね」と告げる。
「いえ、私、もう帰ります」と、立ち上がると「すみませんね。そのときの様子を聞きたいのと、お礼を言いたいと言われるのでね。すぐに来られるそうですよ」と、押しとどめられた。

 駅まではそう遠くないので歩いて行って電車で帰ろう、と考えるとおなかが空いてきた。どっと疲れも出て、うつむいたまま座っていたら、緊急外来のドアが開いて誰かが入ってきた。靴音がそばまで来て、男の声で「失礼ですが、伊藤さんでしょうか?」と言う。
 驚いて見上げながら「ハイ、そうですが」と返事をすると、「木戸と申します。このたびは父が大変お世話になりました。本当にありがとうございました」と相手が頭を下げた。彩も慌てて立ち上がり「いえ、たまたま通りかかっただけです」と頭を下げる。

 二人がほぼ同時に頭を上げてお互いの顔を見る。彩より10センチ以上は背が高い。30歳くらいだろうか。短い髪で、はっきりとした顔立ちが日に焼けている。思わず見つめていたら相手が微笑んだ。
 急に、彩の心臓の動きがおかしくなり、身体が一瞬フワリと浮いたようになる。「直球や」顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

「ちょっとオヤジの様子を見てきます。お送りしますのでもう少し待ってくださいね」木戸はそう言うと病室のほうへと早足で行った。10分ほどで戻ってくると「痛みがあるのと、もういい歳なんで安全を見て今晩は入院させることにしました」と言い、受付の人となにやら話してから一緒に外に出た。

|

« 間奏曲 | Main | クリスマスの贈り物 9 »

ブログ小説」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 間奏曲 | Main | クリスマスの贈り物 9 »