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December 21, 2013

クリスマスの贈り物 13

「君のしたことは順序がちがうだろ!」父が怒り出した。
「すみません、順序が間違ったことはお詫びしますが、私は決して悪いことをしたつもりはありません」孝は頭を下げない。
「でも、お怒りはよく分かりますので、どうか気の済むまで私を殴ってください」と、父を見つめて言った。
「何だと!」父が立ち上がった。
「お父さん、やめて!」「あなた!」
 一緒にいた弟は、いつでも止められるように父のそばに立っている。

 父がそばまで来ても孝はじっと父を見つめたままだ。
 彩と母は、立ち上がったまま凍りついたようになっている。
 突然、父の顔がくしゃくしゃに歪んだ。
「娘を、娘を、どうか、よろしく、頼みます」振り絞るように声を出すと、孝の手を両手で強く握った。
「はい、必ず幸せにします。先ほどは、失礼なことを言って申し訳ありません」孝は父に手を握られたまま立ち上がり、深々と頭を下げた。
 みんな、力が抜けて椅子に座りこむ。

 落ち着いてから、孝があらためてみんなに説明した。
「僕は、彩さんと絶対結婚しようと思っていました。だから赤ちゃんが出来た、と聞いた時は本当にうれしかったんです」
「お父さんのお気持ちはよく分かります。でも、あそこで謝ったら、生まれてくる赤ちゃんに悪いと思ったのです」
「要するに君は確信犯やったんやな。でも、そういう率直さに彩が惚れたんやろうな」
 さすがに父は良く分かっている。孝さんは、まさしく私の直球ど真ん中の人なんです。

 夕方からご馳走を並べ、みんなで飲んで食べた。
 母は、多分人生で一番うれしそうに料理を作り、父も先ほどの剣幕はどこへやら、いつできるのか、と初孫の誕生に上機嫌になっている。
 弟は食べるだけ食べると2階の自分の部屋に姿を消した。
 いつの間にか雨が静かに降っている。
 幸せな夜が過ぎていった。

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