« クリスマスの贈り物 10 | Main | クリスマスの贈り物 12 »

December 19, 2013

クリスマスの贈り物 11

 最近の娘の言動から、この出会いが非常に大事なものである、ということを直感で見抜いた母は、あらゆる人脈と情報網を駆使して、超忙しい正月の美容院を予約して連れて行き、嫌がる振袖を着せた。

「馬子にも衣装やな」振袖を着て、ぬっと目の前に立っている背の高い娘を見て父が言った。
「また、セクハラ発言や」と思ったけれど、一応ほめているので訴えるわけにはいかない。
「でも、可愛い娘を馬子呼ばわりするのは失礼や。尊属侮辱罪ってないんやろか」と考える。

 着慣れない振袖をもてあましながら彼の家に行った。
「あの時は本当にありがとうございました」家に上がると、両親に深々と頭を下げられて恐縮する。丁重にもてなされ、あれこれ訊かれたが精一杯努力しておしとやかに振舞った。
 孝の父親は、もう痛みもとれて大丈夫だと言う。安心した。

 7日は、両親特に母の強い要望で、孝が彩の家に呼ばれることになった。今度は、逆に孝が両親のお礼の言葉を述べ、そのあとで「彩さんとお付き合いしたいので許して欲しい」と切り出した。
 彩は「やった」と思ったが、黙って父の様子を伺う。母は満面の笑みで、促すような目つきで父を見た。「いや、男みたいな娘ですが、どうかよろしく」父も、真面目だけど率直にものを言う孝が気に入った様子だ。

 孝をじっと観察していた弟は、彼が帰ってから「ええやんか」とOKサインをした。
「あんたに許可貰う筋合いはない」と言ったけれど、家族みんなからの評判がいいのはやっぱりうれしい。

 それからは1週間に一度、主に土曜日にデートを重ねた。
 一人では行けなかったバッティングセンターにもよく行った。
 ときどき彼の2DKのマンションに行き、料理を作ったりして過ごしたが、何回目かに行った夜はそこで泊まった。
 バレンタインの日、プレゼントを渡すと、その場で「結婚しよう」とプロポーズされた。

|

« クリスマスの贈り物 10 | Main | クリスマスの贈り物 12 »

ブログ小説」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« クリスマスの贈り物 10 | Main | クリスマスの贈り物 12 »