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November 24, 2013

百田尚樹 「影法師」

2010年7月 講談社発行
今年の小説界はこの人のひとり舞台と言ってもいいくらいで、昨年までなら図書館でたやすく借りられた著作が今年はものすごい競争率となっている。特に「永遠の0」は永遠に借りられそうもない人気だ。

貧しい下級武士の家に生まれた男は、50歳になって八万石の藩の筆頭国家老にまで登りつめていた。
厳しい身分差のために上級武士に殺された父の無念を胸に収めて、剣に学問に励みやがて上覧試合で勝ったことから出世の道が拓ける。
難しい干拓事業を成功させ、江戸勤めから国へ帰った彼は、刎頚の契りを結んだ友が零落したあげく亡くなったことを知るが、同時に彼の出世の裏には己を犠牲にした友の影の力があったことも分かる。
彼は上覧試合で勝たせてくれ、2度までも命を助けられながら何も知らなかった自分の愚かさに後悔するのだった。

父が殺されたとき、友に「武士は泣くものではない」と言われ、それまで涙さえ見せなかった男が、危うく命を救われた干拓地の小屋の前で激しく泣くシーンに心打たれる。

これほどの友情はありえないと思うほどだが、それに何の違和感も抱かせずグイグイと引っ張っていく筆力と、最後の息もつかせない盛り上げかたは素晴らしいかぎり。
熱い男の生き方を描いた秀作。

 

 
   
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Comments

u子さん
なるほど
小説のような特別な状況でなくても人間は多くの人に支えられて生きているのですね。
人とのつながりを大事にしたいと思います。
いい本でした。

Posted by: よし | November 25, 2013 at 04:35 PM

よしさん
人が多くの人に支えられ、その支えに気がつかず
気が付いた時は大事な人を失っている、心して人生を歩めと、この小説は思わせてくれますね。
百田尚樹氏の作品を推薦するなら、必ず入るのがこの作品
だと思います。

Posted by: u子 | November 25, 2013 at 09:44 AM

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