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November 08, 2013

西 加奈子 「通天閣」

Tsutenkaku2006年11月 筑摩書房 発行
通天閣周辺を舞台に、工場で働く40代の独身男と、恋人に置いてきぼりにされスナックで働く20代の女の周辺の人たちの一風変わった人間模様を描いた作品。
一度は子連れの女と暮らしたことがある男も、今は通天閣が見えるだけがとりえのようなアパートに一人住む。向かいに住むオカマくさい男とは目を合わしたくもない。
アメリカに行ってしまった男を待つ女は、スナックのチーフとして働いているが、アクの強いオーナー、変なママ、まともでないホステスたちとの仕事の毎日に神経をすり減らしている。
夢も無く、生きる意味を失いかけてその日を暮らしているような彼らは偶然、通天閣から飛び降りようとする男を目撃する。
男がよく見ると向かいの部屋に住むあの男だった。「自分なんか死んだほうがいい」と叫ぶ男に向かって思わず「死ぬな! お前が好きやー!」と絶叫してしまう。
助かった男は「僕、そんな趣味無いの」と交番に連れて行かれる。ホモと間違われて死ぬほど恥ずかしかったが、それまで「死んでしまえ!」と叫んでいた無責任な野次馬たちも感動して拍手をしていた。単調な毎日にも生きることの意味を見出したような気がする。
汚いホモ同士のやり取りだと見ていた女も、愛されることばかり願うのを止めて、今度出会った人を自分から「愛そう」と決心する。
最後に雪が降るシーンで、男が昔一緒に暮らしていた時に懐かなかった女の子はこの女なんだと分かるが、それ以上の進展は無い。
かなりダークな色調を帯びているので好き嫌いがあると思うが、社会の隅で生きていく人々に向ける温かい眼差しがあるのと独特のユーモアもあるのがこの作者らしい物語。

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