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November 21, 2013

宮部みゆき 「小暮写眞館」

2010年7月 講談社発行
主人公の英一が高校に入った時から大学生になるまでを4話構成にしている、全部で700ページもの大作。
最初は心霊写真ばかり出てくるし、高校生活の話が大半なので飽きてきたころ第3話の「カモメの名前」を読み出したらこの話をテレビで見た記憶がある。
調べたら同じ題名でNHKで今年の3月に放送していた。
第4話まで進むとこれまでと雰囲気がガラリと変わる。楽しい高校生同士のふざけた会話や言葉遊びの中に潜んでいた彼の家庭の本質的な問題が浮き彫りになるのだ。彼と少しずつ交流を深めていく不動産屋の女性事務員も表舞台に出る。
幼い娘を急病で亡くしたため、姑や親戚から心ない言葉を投げかけられた母。あまりの仕打ちに親戚を相手に絶縁宣言までした父。
姉の死に、小学生の弟まで悩んでいるのを見た彼は自分にも責任があったことを痛感し、家族の問題にけじめをつけようと決意する。
祖父の49日の法事に行き、祖母や親戚を前にみなの言葉で母親がどれだけ苦しんだかをぶちまけ「ふざけんじゃねえぞ!」と啖呵を切って帰るシーンには胸のすく思いだ。
若いときに受けた辛すぎる経験のため、人生を捨てたようになっていた女性事務員も、彼の行動を見てけじめをつけて再出発する決心をしたのだった。
世間をよく知る優しい不動産屋の社長が言った言葉、葬式とは故人の生き方とは関係なく残された人間の本性を暴く場なんだ、に納得する。
主役級で10人、脇役を入れて20人ほどの登場人物を適切に配置し、心霊写真や人の死の話から徐々に妹の死に関して残るわだかまりを浮かび上がらせ、最後で一気にクライマックスへ持っていく手腕に、プロの作家とは上手いものだとつくづく思う。


 
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