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October 24, 2013

葉室 麟 「いのちなりけり」

文藝春秋社 2009年7月発行
佐賀藩の支藩である小城藩の部屋住みの下級武士であった雨宮蔵人は、730石の家中筆頭である天源寺刑部の娘咲弥の入り婿になる。しかし死に別れた学問好きの前夫が忘れられない咲弥は、鈍牛のように大きく和歌も解さない様子の蔵人に失望し、彼がこれと思う和歌を見出すまでは寝屋を共にしないと突き放す。
徳川綱吉の時代、水戸光圀、吉良上野介、京の公家、その他大勢の武士そして名前を覚え切れないほどの登場人物による佐賀藩、京都、徳川家、水戸家をめぐる争いに咲弥と蔵人は翻弄され離れ離れになるが、実直で腕のたつ彼のうわさを聞くにつれ彼女は次第に彼に惹かれるようになる。
光圀の女中頭になった咲弥のもとへ死を覚悟して向かった蔵人は見つけた和歌を手紙で送り、何人もの敵を倒しながら十数年ぶりに寛永寺で会うことが出来る。
手紙を読んだ咲弥が「春ごとに花のさかりはありなめど」と口にすると、「あひ見むことはいのちなりけり」と下の句を詠じて倒れる蔵人。
「何度生まれ変わろうとも咲弥殿をお守りいたす」と言い切る男と「死の危険を冒してでも、あの方は必ず駆けつけてくれるだろう」と信じる女の愛情物語のようだけど、物語の主題は元禄初期の歴史の流れの中で、いのち、そして武士にとっての死を考え抜いた男にスポットライトを当てた硬派な物語だと思う。
その後、傷の癒えた蔵人が咲弥と共に佐賀へ向かう場面があり一安心。
日本史の好きな方にはお勧め。
 

  
雨上がりの諏訪湖

   
 
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