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October 31, 2013

小川洋子 「人質の朗読会」

2011年2月 中央公論新社 発行
中南米と思われる国の反政府ゲリラによって人質にされた遺跡観光ツァーの日本人8人が、開放を待つ間に皆の前で各自の物語を発表するという形式の一種の短編集。
さまざまな年齢、職業の男女が、不思議な経験、日常のそして非日常の物語を静かに語る様子が、この作者らしい穏やかな筆致で淡々と描かれている。
囚われた人々はプロの作家ではない、ということを前提にしたためかどの話もそれほどのインパクトは無いけれど、やはり語り口の上手さでいつの間にか読み終わった。特に、通勤途中の電車で遭遇した槍投げの若者に興味を持ち、仕事を休んで半日のあいだひたすら彼の槍投げの練習を見続けた話が印象深い。
ただ、人質という事態とこれらの物語を語る必然性が弱いと思ったが、軍と警察の特殊部隊の強行突入で人全員死亡したことが冒頭に述べられているので、間近に死を迎えるかもしれない人々が物語を創造するという行為で無意識に恐怖心を跳ね除けたのだ、と解釈すべきなのだろう。
  
 
  

   
    
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