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September 29, 2013

長野 慶太 著 「神隠し」

日本経済新聞社 2013年3月21日 版

悪天候とクリスマスイブが重なり、大混雑したロスアンゼルス国際空港で母親がセキュリティチェックを受けている間に8歳の息子が姿を消した。母親の様子からただ事ではないと直感した空港職員から電話を受けた新聞社のグレッグは、取材道具を持って現場に飛び込んでいく。緊張した出だしから最後までぐいぐいと引っ張る筆力が素晴らしく、かなりのスピードで読みきってしまった。
200台もの監視カメラから録画した映像を見ても誰かが少年を連れ出したり隠した様子は見つからず、他社の新聞報道には「神隠し」という表現さえ使われるが、パニック状態になった母親の顔が忘れられないグレッグはあきらめずに捜査を続ける。飛行機にも乗らず出口から出た形跡も無い少年はこの広い空港のどこかにいるのだ。
グレッグは、現在の日本人の妻と結婚する前に離婚した米国人の妻と息子がいるが、なかなか会うことが出来ない。子に会えない親、親に会えない子を思ってこの事件を大きく扱おうとするグレッグは、新聞社の方針の枠をはみ出していることで徐々に孤立していく。
グレッグの渾身の努力で事件の真相は判明するが、それを公にすることは誰のためにもならないことを知った彼は新聞社を辞め新しい道を探す。
事件の発端となる条件がそうとうシビアなのがちょっと気になるけれど、親子の愛を深く絡めた推理小説として一級品のできばえ。


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Comments

u子さん
小説には疎いので信頼できる方の読んだ本を読むことが多いのですが、これは大当たりでした。
アメリカで長くビジネスを続けてきた筆者ならではの警察や離婚訴訟に関する描写も日本人には興味深いものです。
家庭環境、親子・夫婦の愛、仕事、職場での人間関係そして病気などさまざまな問題を取り入れた優れた作品ですね。

Posted by: よし | September 29, 2013 at 08:45 PM

よしさん

びっくりする展開の小説ですよね。さすがに日経小説大賞受賞作品です。
仕事に対する姿勢、職場環境、主人公の家族に対する考え方、そして、思わず涙させられる表現、オドロキの結末。まさに読みごたえ十分と言える作品でした。

Posted by: u子 | September 29, 2013 at 07:33 PM

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