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September 01, 2013

重松 清 「とんび」

Tombi角川書店 平成20年10月31日発行
本を読み終えるまでにティッシュの箱の半分ほどを使ってしまった。
恋女房を事故で亡くしてからは男手一つで一人息子へ愛情を注ぎつくして育て上げた男の物語。大酒も飲むけれど真面目に仕事をして真剣に息子と対峙しながら苦しみ悩む一本気で不器用な姿にいじらしささえ覚える。
息子が部活で後輩をしごいたために相手の父親が怒鳴り込んだとき、親子であやまった後もまだごねる相手に一転、大声で「もうこれで充分気が済んだじゃろ!」と無理やり一本締めで追い返してしまう。思い切り殴られたけれど最後は全力で自分を守ってくれる父親を見直す息子。
東京の大学へ進んだ息子が出版社のアルバイトで書いた記事が載っていると聞けば、その雑誌を毎月大量に買い込んで知り合いや職場に配る父。
7歳年上で子供もいる女性と結婚するのだと家に連れてきたときも、気持ちの整理は出来たのに素直に言葉に出せないひねくれ者の父。
それを逆手にとって幼なじみが打った芝居にまんまと引っかかって「息子が選んで息子に惚れてくれたオナゴじゃ!」そして「息子の嫁はワシの娘じゃ!」と本心を叫んでしまう。
夫婦に子供が出来るときも、自分は(嫁が連れてきた)最初の孫が一番可愛いのだからお前は次の子を可愛がれと息子に告げる。
実の親の愛を知らずに育ったためか、一番愛情が欲しい小さな子供のことを真っ先に考える彼は理のスジではなく何よりも情のスジを大事にする男なのだ。
再婚して音沙汰が無かった実の父の死に目に合って初めて自分は人の子なんだと実感するシーンがこの小説の骨子だと思う。
隣人たちとのつかず離れずのふれあいや広島の言葉が心に温かい。
重松節とでもいうのだろうか、上手くのせられて気持ちよく泣ける作品。
  
 

  


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Comments

sankichi1689さん
コメントありがとうございます。
残念ながらテレビドラマをみていないのです。
原作のヤスの広島弁は大阪人にはほぼ理解できるので感情が率直に伝わってきます。
読みながら恥ずかしいくらい涙が出ました。
すてきなブログなのでリンクさせていただきたいと思います。

Posted by: よし | September 01, 2013 at 08:28 PM

よし さま
はじめまして。sankichi1689と申します。
「とんび」はTBSドラマでは標準語でしたが、やはり原作の広島弁が心にしみます。ヤスの感情がストレートにつたわり、私も読んでいて、泣いてしまいました。

Posted by: sankichi1689 | September 01, 2013 at 07:26 PM

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