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August 19, 2013

浅田次郎 「終わらざる夏」

Natsu集英社発行。上下巻で900頁の大作。ポツダム宣言を受諾して降伏した日本と1945年8月18日、日ソ中立条約を無視して千島列島の最東端に上陸したソ連軍との戦いに至るまでを描いた物語だが、純然たる戦争小説とは趣を異にする。すでに敗戦を予測した大本営は講和のための通訳として英語の出来る民間人を徴兵し、またそれを悟られぬように偽装のため同様に戦いに不向きな人間2名をアメリカが上陸すると思われた千島列島の占守島(しゅむしゅとう)に送り込む。
40歳を超えた民間人、歴戦とはいえ右手の指3本を失った傷痍兵、医専を出たばかりの若い医者など異常な徴兵にとまどう彼ら。そして彼ら以上に苦悩するのは妻であり、母であり、そして疎開中の子供たちだ。徴兵された夫のために、それまでは見向きもしなかった千人針を自ら準備して街頭に立つ妻。指を失い兵役はもう無いはずだった息子まで奪おうとする戦争に身もだえして泣く老母。

賭場のいざこざで人を殺し服役していた男も、爆撃や機銃掃射で罪の無い民間人が無残に死んでいく戦争にあきれ、疎開先から逃げ出した二人の子供を守って東京まで送り届けてしまう。
作者はこの本で戦争の愚かしさを書いているが、まさしく堪へ難きを堪へ、忍ひ難きを忍んだのは、多くの国民それも一番弱い女子供なのだということを激しく訴えている。
岩手の言葉、妙に納得するやくざ者の論理、一見弱そうでも子や孫を守るためには士官にさえ啖呵を切る老婆などこの作者らしい筆使いのうまさに堪能して夢中で読み終えた。
史実に基づいて綿密に書かれた超のつくお薦め本。


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