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November 02, 2012

芥川龍之介 「侏儒の言葉」

Shuju侏儒とは小さな人と訳されることもあるけれど、この本の論旨からいうと知識の無いとるに足らない人間と解したほうがよさそう。そのちっぽけな存在である侏儒が社会常識・通念に痛烈な皮肉をつぶやくという形の、いかにもこの作者らしい警句集。若い時からの座右の本であり、読み返すたびに新たな刺激を受け、ある意味芥川龍之介の集大成ではないかと思うほど。

特に共感するのが、「人生は地獄より地獄的」の項。人生の与える無法則の苦しみに比べれば、地獄の苦しみは一定の法則に基づいているので、作者は2、3年も地獄に住めば針山地獄でも血の池地獄でも順応してみせる、とまで言い切っています。私は17年前の阪神大震災をかすかに体験した程度ですが、昨年起きた東北の大地震・津波の恐ろしさはまさしく地獄以上です。
また、作者は道徳という言葉が嫌いなようで「強者は道徳を蹂躙し、弱者は道徳に愛撫される、道徳の迫害を受けるのは常に中間者である」と書いています。確かにフルスモークの黒いベンツに駐車違反のステッカーが貼られているのを見たことはなく、貼られているのは大体ファミリーカーcarです。
輿論は私刑だ、というのも大いに共感できるところ。
マスメディアを中心として展開された世論に反対するのは大変勇気のいることで、下手に反対意見を投書でもしたら報道を鵜呑みにするご近所から村八分に遭いかねません。しかし大新聞がウソの報道をしたり、写真が違った、判決後何年も経ってから冤罪であることが分かった、なんてことは最近でもあったこと。

この本は、普段当然のように思われ行われていることも、反対の視点から見れば矛盾していたり滑稽であったりすることが分かる、と教えてくれます。あの時代に軍人を茶化したり、もっと危険なことも平気で書いた芥川龍之介という人は凄い人だと思います。
  
  
 


 
日本庭園のせせらぎ
   

 
P1010914m


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